一緒に考えよう!合理的配慮の提供とは
「障害者差別解消法」施行に伴い、全ての大学等についても、不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮の提供が求められています。では、どんなことが不当な差別的取扱いにあたるのか、合理的配慮とは何なのか、その基本的な考え方について、わかりやすく解説します。
第8回就職支援について
ファシリテーター |
第8回は、就職支援をとりあげます。大学における支援の中心は、やはり教育や研究に関することになると思いますが、言うまでもなく高校等から大学への移行期や、就職等の社会への移行期にも支援の必要性が生じる場合があります。ただし、このような支援をどの程度大学としての責任で実施していくかについては、様々な考え方があるかもしれません。今回は、いくつかの大学の実務担当者によるワークショップ形式で就職支援について考えます。ワークショップの参加者は、いずれも大学等の障害学生支援の実務担当者です。
検討課題
- 就職活動は大学としての支援の対象となるか
- 移行支援という視点
- 学外の社会資源
参加者紹介
|
|
|
就職活動は大学としての支援の対象となるか
Cさん:本学では具体的な話として、就職活動に関するセミナーでの事例がありました。聴覚障害のある学生がいて、その学生は普段の授業等でノートテイク支援を利用していたので、そのセミナーでもノートテイク支援をしてほしいというものでした。その時は、実際にノートテイク支援を行ったのですが、学内からは授業ではない場面でも支援が必要なのかという点について、ネガティブな意見があったのも事実です。
Aさん:本学では、例えば就職に関する個別相談やエントリーシート作成の講座では合理的配慮をしたことがありますが、大規模のセミナーや企業を集めての説明会等では、十分な配慮ができていないという実態があります。個人的には、そこも対象に入るような気がするのですが、どのように考えれば良いかははっきりとしたコンセンサスがありません。
Aさん:ただ、障害学生自身が就職活動において支援を求めても良いということを知らないこともあるように思います。または、自ら遠慮しているようなこともあるかもしれません。
Bさん:一方で、就職活動のことまで支援の対象となると、いわゆる過重な負担ではないかという意見も出てきそうな気がしますが、その点はどのように考えれば良いのでしょうか。
Cさん:なるほど。それでは、障害学生が企業の主催する説明会や実際に面接を受ける際の配慮については、どのように考えれば良いですか。
移行支援という視点
ファシリテーター:ただ、企業側に配慮を求めていくにあたっても、大切なポイントがあると思います。例えば、障害学生がどのように自分のことを企業に伝えていくのかという部分については、事前に相談しておくと良いかもしれません。場合によっては、普段の授業ではこのような支援を利用していますということや、障害の影響で難しいことについてもこのような方法であれば可能です、ということを伝えていくことで、企業側との対話もスムーズに進むでしょう。
ファシリテーター:もちろん、そのようなセミナーなどで対応することもひとつの方法ですが、特別な機会を作るということ以外にも方法はあると思います。例えば、普段の授業等の相談や支援を進めるなかでも、社会を見据えた関わりを常に意識しておくことで、学生がそのような力を付けていけるかもしれません。これは中長期的な移行支援という視点ですね。就職活動の支援は一定の時期だけの支援のように見えますが、やはり、実際にその時期に入るまでにどのような経緯があったのかという点はとても大切だと思います。
Cさん:なるほど。普段の関わりのなかでも社会への移行を意識しておくことで、それ自体が就職活動にも繋がっていくという部分があるということですね。そういう意味では、低学年のときからもそのようなアプローチをしていく必要がありそうですね。
学外の社会資源
Bさん:本学では、支援機関の方にご協力いただいたケースもあります。本学の場合は、障害に関してそれほど高い知識をもったスタッフがいなかったので、とても助かりました。
Cさん:そういう発想はあまり持っていませんでした。例えば、うまく就職が決まらなかった障害学生のための支援機関などもあるのですか。
ファシリテーター:もちろんあります。これも少し地域差があると思いますが、新卒応援ハローワークや似たような機能をもった窓口を自治体で設置していることもありますし、今では就労移行支援というものを実施している支援機関も増えています。ただ、就労移行支援機関もどこでも良いというわけではなく、その学生のニーズにあった機関を探すということは支援が必要な部分かもしれません。
いかがでしたか。就職支援については、まずそのような支援自体が大学として行うべき合理的配慮の対象として十分考えられるということ、また、就職活動の支援は短期的なサポートだけでなく中長期的な移行支援という視点が大切になると思います。さらに、大学だけで全ての支援を考えるのではなく、地域の支援機関等や場合によっては企業側との連携・協力により、より良い対応を進められるのではないでしょうか。
以上の点について、詳細は、以下の「紛争の防止・解決等のための基礎知識(2)大学等における主な課題」でも解説していますので、ご参照ください。
ご意見募集
本コラムへの感想、ご意見等を募集しています。以下のメールアドレス宛てに「ウェブコラム第8回について」というタイトルでお送りください。
メールアドレス:tokubetsushien【@】jasso.go.jp
(メール送付の際は、@の前後の【】を削除してお送りください)