1-7.紛争解決のための第三者組織

(1)大学等における基本的な考え方 7.紛争解決のための第三者組織

【第三者組織】

第三者組織とは、障害学生が、大学等から不当な差別的取扱いを受けていると考えたり、合理的配慮を含む障害学生支援の内容やその決定過程に対して不服がある場合に、障害学生支援を行なう部署や委員会等に対して、中立的な立場で調停ができる学内組織です。
障害のある当事者が委員として参加していることが望ましいとされています。

学外の相談・調停窓口

文部科学省高等教育局、法務省人権擁護局、障害者差別解消支援地域協議会等

学内に第三者組織が整備されていない場合や、第三者組織でも調停ができなかった場合、障害学生は、障害者差別解消法に基づき、学外の相談・調停窓口に、紛争解決のための相談を行なうことができます。大学等は、こうした権利保障に関する学外の相談窓口の存在を障害学生に周知することも必要です。

事例講評

ここでの「紛争」とは、障害学生等が申し出た合理的配慮に対し大学当局との間で合意形成に至らなかった場合を指すものです。具体的には、

があります。
大学等から寄せられた報告の多くは両者で建設的な対話がなされ合意形成に至っていますが、いくつかの大学等で障害者差別解消法の趣旨に基づき検討すべき事例がみられました。

例えば、重度の身体障害学生に対する合理的配慮をめぐって、当該学生は高校在学中と同程度の合理的配慮を求めていたが、大学側は学内の支援体制が十分でないことから外部委託で対応を進めるということは、実際によくある事例です。法の趣旨から考えると、できるだけ学内での支援を充実させ、対応に限界がある場合に外部委託するのが望ましい手順です。大学が主体的に当該学生を受け止め、各種資源(全国高等教育障害学生支援協議会、JASSOの拠点校等)との連携を進めながら支援体制を構築していくことが重要です。

また、車椅子ユーザーの学生に対する合理的配慮として、教室の座席を改修するというのもよくある事例です。当該学生が受講できるよう教室の最後列を車椅子対応に改修した結果、大教室等において他学生と離れて着席することになってしまい、学生が疎外感を持ったという事例がありましたが、これを知った大学は教室の前方に車椅子対応の机を設置し、学生との合意形成を図っています。入学前から両者で合理的配慮に向けた協議を重ねていたのですが、当該学生の心理的な負担等への配慮が十分ではなかったことが配慮提供後に判明し対応したというもので、合理的配慮を検討する際は当事者視点に立つことの重要性が示された事例です。

身体障害学生が学外行事に参加する際にも合理的配慮が必要になることがあります。ある事例では、大学側は安全確保のため当該学生専属の支援者を同行させることを行事の参加要件としました。これに対し学生は行動が制約される等の理由から両者は合意に至らず、結果的に学生は行事への参加を取りやめました。このケースでは大学側の参加要件が先行し、合理的配慮に向けた協議が対等な立場でされていませんでした。当該学生が他の学生と分け隔てなく行事に参加しつつ、安全確保をはかる方法(合理的配慮)を導き出すことが重要です。一例を挙げると、同行者が当該学生専属ではなく学生集団全体の引率者とし、安全確保が必要な場合は迅速に対応するといった方法です。紛争を防止するためには、合理的配慮に向けた学生との対話をできるだけ対等な立場でよりていねいに時間をかけて進めることが大学等に求められています。

また、合意形成の阻害要因として、当該学生と保護者に障害受容ができていないことがよく挙げられますが、当該学生のアイデンティティにかかわる問題を要因とすることは適切とはいえません。

事例を探す