事例紹介
事例が起きた時期
令和元年度
発生時期:進級時
事例が起きた学校
私立短大、学校規模:1,000人から1,999人
対象学生
学科(専攻):家政、年次:2、障害種:発達障害(ADHD)
支援の申し出
1.支援の申し出の受付
- 支援の申し出:有
- 申し出を受けた部署(者):学生生活支援担当部署
- 支援の申し出を受け付ける申請書(様式):有
- ニーズ聴き取りのための面談:実施した
2.支援が必要とされた場面
授業・研究指導 実習、フィールドワーク等 日常生活(時間管理・忘れ物等)
申し出への対応
1.配慮内容の決定について
- 配慮の提供に関する学内関係部署の検討・協議:実施した
- 検討協議に参加した部署(者): 学生生活支援担当部署 教務担当部署 教育部門 保健管理部門 学生相談部門 就職支援部門
- 配慮内容の決定過程: 当該学生は参加せず、決定後に通知した
- 学内関係部署への配慮依頼文書の配付:実施した
2.配慮内容決定後のモニタリング・フォローアップ
- 当該学生に対して、感想・不満等の聞き取りを行なった
- 当該学生に対して、定期面談を行なっている
- その後の状況に関して、関係部署(者)に聴取、情報共有を行なっている
相談内容
家族からの要望を受けて、家族、本人を交えて面談を実施し、本人の意思を確認した。本人からは具体的な支援内容の言及はなく、「うまくいかないので、うまくいくようにしてほしい」とのことだった。
申し出内容と配慮の提供
申し出内容1:実験・実習時、サポーターをつけてほしい
※学生自身は出来ていないことの自覚はあっても、困りごととしては捉えておらず、家族からの要望として出された。
- 提供した配慮:申し出通りの配慮
- 配慮内容決定時での合意形成:できた
- 合意形成できたと考える根拠:こちらの提案を受け入れた
- 提供した配慮の具体的内容:・科目担当者は、口頭や視覚からの授業展開だけではなく、授業資料として作成したものを配布していた。
- 事後評価:ニーズを完全には満たしていないが、学生も概ね満足している
- 事後評価の理由・詳細:・科目担当者によって、対応に差がある。学生の状況を知らない外部教員もおり、文字化するという視覚情報としての定着が不十分だった。
申し出内容2:苦手な時間管理(遅刻・時間内に行なう等)や、急な変更にも対応ができ、忘れ物が少なくなるようにしたい。
- 提供した配慮:学校が提案した配慮=日常生活スキルトレーニングとして、時間管理の方法や忘れ物を防ぐ方法等の提案。
- 配慮内容決定時での合意形成:できた
- 合意形成できたと考える根拠:こちらの提案を受け入れた
- 提供した配慮の具体的内容:時間の管理や忘れ物対策に関して、学生相談室が日常生活スキルトレーニングを提案し、実施・経過観察を行なってきた。
- 事後評価:ニーズを完全には満たしていないが、学生も概ね満足している
- 事後評価の理由・詳細:学生の苦手な、時間管理の部分では変化が見られてきた。授業準備物の忘れ物に関しては、ゼミ担当教員が中心に関わり、事前に確認できるようになってきた。
配慮内容決定後の不服、不満、苦情の申し立て
- 不服、不満、苦情等申し立て:あった
- 申し立て内容:実習サポーターは、学科の先生にしてほしい。
- 申し立てへの対応に関わった部署: 学生生活支援担当部署 教務担当部署 教育部門(学部、担当教員等) 保健管理部門 学生相談部門
- 学生の反応の具体的内容:実習にサポーターをつけた当初は「実習がうまくできてよかった」という感想だったが、一方で「質問の答えが、教員の言っていることと違うように思え、教員に改めて聞き直さなければならなかったため、やりにくさがあった。サポートについてもらわなくても自分はできたと思う」とのことだった。教員からは、サポートがつかないとできなかっただろうという評価だった。この1年目の支援での申し立てを受けて、2年目の実習では、サポーターは実習全体のサポートを行ない、学生に対しては教員が直接的に関わる方法に変更したところ、本人も満足している。
- 学外機関との連携:連携・協議し配慮を調整
- 連携・協議の具体的内容:学生相談室が作成した、紹介状をもって専門医を受診。専門医より「診療情報提供書」並びに心理検査結果と、具体的支援方法が指示された。
- 申し立てへの対応手順:保健室(保健管理部門)で、学生との対話から状況を把握し、学生相談室に繋いだ。学生相談室では、面談を通し、学生の心理面を含めた受け止め方を確認し、所属学科へ状況を報告。学生の目標(卒業を目指したい)を改めて確認の上、関連部署が一堂に会し、計画の評価を行ない、支援方法を再度検討した。
- 申し立てへの対応内容:・学生自身のニーズを確認の上、実習サポーターは学生の事を周知している職員が担当し、全体の実習がスムーズに展開するために、実習補助者を採用することとした。
その後の経過、課題等
<学生の経過・課題>「合理的配慮」により、生活の中での大きな課題であった、時間管理に関しては成果が見られてきている。忘れ物を減らすことや急な変更に対応できるようになることは、今後の継続課題である。修学に関しての、実習演習科目の「チームとして取り組め、ミスを少なくしてやり遂げられる。」という課題は、今回の計画変更の成果に期待して行きたい。
<学園としての課題>今回、紛争防止事例として回答させていただいたが、学園として規定の整備はされているが、実際の場面になると、事例も少なく、「合理的配慮の提供」という事の捉え方が、教職員で理解が違っていたことや、「障害学生支援」という事の受け止めかたにも温度差がある事がわかった。今後、該当学科だけの理解だけではなく、全教職員が正しく理解し、該当学生はもちろん、教職員の負担感も軽減しながら、全学生にとって良い支援が出来るようにしていく組織づくりが課題であると感じる。