事例に学ぶ 紛争の防止・解決等につながる対応や取組
事例No.446(視覚障害・弱視)
申し出内容
- 1. 試験時において、通常の印刷文字(明朝体、10.5ポイント程度)では、拡大鏡を使用せず読むことに大きな困難がある。拡大鏡を使用の上、14ポイントでゴシック体太字であれば、読むことが可能である。
- 2. 拡大鏡を使用して文字を読む際、一度に認識できる範囲が限定的であり、問題文全体を読むために時間がかかる。行間が狭いと、読みづらい。
- 3. 論述形式で解答する出題の場合、解答用紙の罫線の幅が狭いと記入しづらい。罫線の色が薄いと見えない。また、解答の記入や解答内容の確認に時間がかかる。
- 4. マークシートによる解答は難しいため、直接問題用紙に解答したい。
配慮内容
- 1. 試験問題は14ポイントのゴシック体太字また行間を広めに空けて作成した。さらに、拡大鏡の使用を許可した。
- 2. 試験時間を1.3倍に延長した。
- 3. 申し出の通り、解答用紙を変更した。
- 4. マークシート形式の試験の場合には、問題用紙に直接丸をつける解答方法に変更した。
解説
試験時の対応例です。事例No.456も同じ学校からの提供事例ですが、いずれも申し出内容が非常に詳細で具体的であるところが特徴的です。学生からの申し出が常にこのように具体的であれば良いのですが、特に入学者選抜等では、そこまで自らのニーズを把握している学生ばかりではありません。おそらく、このケースでは、受入側の大学がニーズの聞き取りに関してノウハウを持っていて、丁寧な聞き取りを行なっているため、このように具体的なニーズが明らかになっているのではないかと想像されます。障害の様態ごとに、どのような配慮が必要となるか、予め具体的内容をリストアップしておく等、ニーズ聞き取りのためのノウハウを基礎的な支援体制の中に組み込んで、丁寧な聞き取りが行なえれば、学生との話し合いをスムーズに進めることができるだけでなく、提供した配慮と、学生が提供してもらえると思っていたものとがすれ違うといったトラブルを防ぐことにも繋がります。なお、この事例における試験時の対応例は、過重な負担、本来業務付随性、同等の機会、本質変更不可、意向の尊重などの合理的配慮の要素を満たしています。大学が学生と建設的対話をする際には、これらの要素をお互いの共通了解事項として常に念頭に置くことが大切です。