1-6.合理的配慮内容の決定手順

(1)大学等における基本的な考え方 6.合理的配慮内容の決定手順

「第二次まとめ」では、合理的配慮内容の決定手順を以下のように示しています。

【意思の表明】

原則として、障害学生本人から意思の表明(申し出)があった場合に、合理的配慮を行ないます。
申し出はなくとも当該学生が必要としていることが明白な場合、以下のように努めることも必要です。

  • 適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかける
  • 日頃から学生個々の(障害)特性やニーズの把握に努める
  • 障害学生自ら必要な申出ができるようになるよう促す

【根拠資料】

原則として、申し出には根拠資料の提出が必要です。根拠資料は、個々の学生の障害の状況を適切に把握するためのものです。

  • 障害者手帳の種別・等級・区分認定
  • 適切な医学的診断基準に基づいた診断書
  • 神経心理学的検査の結果、学内外の専門家の所見
  • 高等学校等の大学入学前の支援状況に関する資料等

障害の内容によって根拠資料の提出が困難な場合があることにも留意する必要があります。その場合は、以下のように努めることも必要です。

  • 障害学生が根拠資料を取得する上での支援を行なう
  • 建設的対話等を通じ必要性が明白な場合は、資料の有無に関わらず合理的配慮の提供について検討する

【建設的対話】

合理的配慮の内容は、障害学生と大学等が建設的対話を行なって決定します。
建設的対話においては、障害学生本人の意思決定を重視し、本人の意思確認が不在のまま一方的に合理的配慮内容の決定が行なわれることは避ける必要があります。
また、障害学生が高等専門学校生等(後期中等教育段階)の場合は、必要に応じて保護者等から意見を聴取します。

内容の決定の際の留意事項

合理的配慮の内容を決定するにあたっては、教育の目的・内容・評価の本質を変えず、過重な負担にならない範囲で、教育の提供の方法を変更することに留意します。

【モニタリング】

合理的配慮内容の妥当性やその後の状況把握のためにモニタリングを行ない、必要に応じて内容の調整を行なうことも重要です。

事例講評

大学等における障害学生支援は、障害者差別解消法が施行されたことで必要性が生じているものではなく、教育機関としても普遍的な機能のひとつと考えますが、法律ができたことの意味はとても大きいでしょう。とりわけ、差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供にあたっては、支援の対象や範囲などについて、法律で求められていることをしっかりと確保しておくことが必要になっています。
合理的配慮の内容の決定手順についても、各大学等において文部科学省の第二次まとめで示されていることを具体的な形にしていくことが望まれますが、実際の支援現場においての課題は少なくないように考えます。
各大学等の事例を見る限り、「意思の表明」「根拠資料」「建設的対話」のあり方について、まだ十分に整理できていないことがわかります。現時点で集まった事例は障害者差別解消法の施行前の事例がほとんどなので、当然のことなのかもしれませんが、法律が施行した後でも同様の状況がある大学等は少なくないと思われます。
本調査で集まった事例においては、学生本人からの「意思の表明」がきっかけになっているケースが多いですが、実際には明確な「意思の表明」がなく、大学等の組織としてもどのように働きかけるかに迷うケースも少なくでしょう。特に、発達障害や精神障害による困難さがあると思われる学生へのアプローチは多くの大学等で課題となっていることでしょう。実際に紹介されているケースでも、「診断はあるが学生本人がそれを認めずに合意形成に時間がかかる」というケースもありました。「意思の表明」をいかに引き出していくのかについては、各大学等の状況によって対応は様々だと思われますが、積極的な情報公開など、何らかの対策が必要になると考えます。
また、「根拠資料」のあり方には、様々な意見があるところでしょう。合理的配慮の提供においては、合意形成をいかにはかっていくかというプロセスが生じるため、そのための「根拠資料」のあり方は重要な要素になります。ただし、正式な「根拠資料」がないため、対応が難しいというケースも見受けられます。支援の内容によって、合意形成をする上での根拠は異なるため一概にはいえない部分はありますが、「根拠資料」がないことで何の相談・支援も実施しないということは避けるべきではないでしょうか。この点について、常に対話的且つ段階的にすすめていく必要があると考えます。
「建設的対話」については、(まだ十分ではないかもしれませんが)様々なケースで行なわれていることがわかります。例えば、最初は学生本人が納得していない場合でも、話し合いの後に合意形成しているケースなどがあるようです。ただし、本当に妥当な判断ができていたかどうかについては、十分に検証する必要もあるでしょう。
さらに、決定した合理的配慮を適宜モニタリングして、必要に応じてより良い形へ修正していくことも大切です。合理的配慮の内容は、学生本人の状況やニーズの変化だけでなく、環境的要因によっても適宜調整する必要があるでしょう。そのために、柔軟に変更していくことができる体制は重要です。いくつかの事例でも、最初に用意した支援を適宜調整しながら対応しているケースがあり、そのようなケースほどうまくいっているように思われます。
合理的配慮内容の決定手順については、支援体制のなかに明確に位置づけていくことだけでなく、具体的に実施していくことが重要になるでしょう。そのため、各大学等における決定手順は、学生本人や教職員に伝わりやすいように明示していく必要があります。各大学等においては、このプロセスを各組織に合わせて構築すること、また、積極的な情報公開や周知を通じて、このプロセスについての共通認識がもてるように働きかけていくことが求められます。

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