事例No.794(他の慢性疾患)面談時の教員のコメントが教育を受ける権利の侵害にあたるのではないかとの苦情申し立て

【事例紹介】

事例が起きた時期

平成29年度
発生時期:授業開始後

事例が起きた学校

私立大学、学校規模:10,000人以上

対象学生

学科(専攻):社会科学、2年次

支援の申し出

1.支援の申し出の受付

  • 支援の申し出があった
  • 支援の申し出に関する申請書(様式)がある

2.支援が必要とされた場面:授業・研究指導、実習、フィールドワーク等

申し出への対応

1.支援の申し出の受付

  • 配慮の提供について、学内の関係部署による検討・協議を行なった
  • 協議に参加した部署(者) :障害学生支援部署、学生生活支援担当部署、教務担当部署、教育部門、保健管理部門、警備関連担当部署
  • 配慮内容の決定は建設的対話を通じて学生との合意の上で行なった
  • 決定した配慮内容について学内関係部署に配慮依頼書を配付した

2.配慮内容決定後のモニタリング・フォローアップ

  • 当該学生に対して、感想・不満等の聞き取りを行なった
  • その後の状況に関して、関係部署(者)に聞き取り、情報共有等を行なっている

申し出内容と配慮の提供

申し出内容1:持病(てんかん)に関する理解、発作時の対応依頼

決定した配慮内容:申し出通りの配慮の提供を決定した
配慮内容決定時点での合意形成:できた
合意形成できたと考える根拠:こちらの提案を受け入れた
事後評価:ニーズを完全には満たしていないが、学生も概ね満足している
事後評価の理由・詳細:配慮の申し出から現在に至るまで、学内において発作は確認されていない。そのため、申し出があった発作時の対応については未実施であり、ニーズを完全に満たしたとは判断しかねる。


申し出内容2:学外実習において、持病を理由として不利益が生じないよう、受け入れ先への理解・配慮を求める

決定した配慮内容:学校が提案した配慮の提供を決定した=申し出時、確定診断が出たばかりであり、服薬による発作コントロールができていない状況であった。そのため、受け入れ先への情報提供や具体的配慮をお願いするには、情報が過少であると判断し、実習指導担当者との定期面談の実施を提案し、尚かつ、医師の意見書の提供を求めた。
配慮内容決定時点での合意形成:提案時、ご家族の強い反発を受けた。しかし、面談を重ねる上で、理解を得ることができ、最終合意へと至った
合意形成できたと考える根拠:こちらの提案を受け入れた
事後評価:当該年次には学外実習が実施できなかった
事後評価の理由・詳細:成績不振により、学外実習に必要な単位を取得することができなかったため、実習は翌年へ持越しとなった。そのため、申し出のあった配慮を実施するに至らず。ただし、服薬により発作が起きにくくなっており、安定した学生生活を送ることができている。

配慮内容決定後の不服、不満、苦情の申し立て

  • 不服、不満、苦情等の申し立てがあった

申し立てを受けた部署(者):障害学生支援部署
配慮面談時の教員からのコメントに対し、不信に思える内容があったと保護者より訴えがあった。
主訴としては、教育を受ける権利侵害にあたるのではないかとの苦情の申し立てであった。
「実習開始時に発作コントロールができていない場合、医師の意見書提出を求める」との発言を受け、状況によっては実習に参加することができなくなり、結果的に必修単位を落とすことになるのではないかと誤解を与えた。
申し立てへの対応に関わった部署(者):障害学生支援部署、教務担当部署、教育部門(学部、担当教員等)

申し立てへの対応手順:

  • まず、これまでの経緯を知る、障がい学生支援コーディネーターが保護者へのヒアリングを行なった
  • 保護者の感情に寄り添うことができず、結果的に誤解を与えてしまった可能性があると判断し、再面談を提案
  • その後、学生本人も同席の上、所属学科の教員と教務担当職員を含め、再度面談を実施した

申し立てへの対応内容:まず、学生本人・保護者に対して、不信感を与える発言があったことを謝罪。また、確定診断を受けたばかりであり、今後の治療に対する不安等、心情に対する配慮不足であったことを併せて謝罪。
その上で、教員の発言の意図は、ご本人の安全を最優先に考えた発言であったことを説明。それにより、学生本人・保護者の誤解が解け、納得いただくことができた。

対応に対する学生の反応

  • 納得して、問題なく修学している

学生の反応の具体的内容:教員の発言の意図が分かり誤解が解けたことを受け、申し立て事項については解決した

その後の経過、課題等

申し出のあった配慮事項に関しては、引き続き実施している。また、継続的な服薬により発作が抑制されつつあり、体調も安定傾向にある。
その一方で、レポートの未提出や成績不振等、別の課題が浮き彫りとなり、学科教員による見守りと指導を行なっている。

【参照】