事例No.13(ADHD)障害について学校や実習先に伝えることに不安

【事例紹介】

事例が起きた時期

平成28年度

事例が起きた学校

私立短期大学、学校規模:1から499人

対象学生

学科(専攻):教育、2年次、発達障害(ADHD)

相談、不満・不服の申し立て、または支援の申し出

2年次春休み明けに相談したいと申し出があり、1年後期に開講した障害関係の授業担当者として相談を受けた。
授業でADHDについて学び、自分にあてはまると思い、春休みに自ら受診し診断がついた。
1年次の幼稚園実習でこなせないことが多く、再実習となった。診断がついたことを学校に伝える方がよいのか、次の保育所実習の際に、実習先にも伝えるのがよいのか迷っている、睡眠不足になると集中できない、服薬により集中できるようになれば実習を乗り切れるのではないかと思うなど相談があった。相談を継続する中で、診断がついたことを知ってほしいという希望が出された。

学校の対応

1.関わった部署

障害学生支援部署、キャリアセンター、その他(実習担当部署)

2.対応内容

個人レベルの相談から学内で共有することになったので、まず実習担当教員等への報告に立ち会い、学科協議会で専任教員にも報告した。診断書のコピーは総務部に提出した。授業や実習で具体的にどのような配慮を申し出たらよいかはわからないとのことで、通院先で心理検査を実施していなかったため、自己理解することと授業や実習で配慮の申し出が必要かどうかを検討するため、心理検査の実施について提案し、本人・保護者の同意を得た。委員会に心理検査(WAIS-Ⅲ(ウェクスラー成人知能検査))の購入を図り、稟議が通ったので、臨床心理士・特別支援教育士をもつ教員として委員会から依頼を受けた形で、本人に心理検査を実施し、結果について本人にフィードバックした。
通院先で薬の調整をしてもらい集中できる形で実習に臨みたいとのことで、実習先には実習担当者が事前に診断がついていることを説明し、配属クラスの配慮を申し出、実習中の巡回指導も行なった。実習先では配慮を受けながら実習をやり終えることができたが、実習評価が低く、実習担当者との振り返りの中で、免許資格取得の困難さが伝えられた。

学生等の反応

不服、不満の申し立てまではいかないが、相談があった。
実習振り返りの後、再度本人から相談があり、免許資格取得をやめて、企業就職に切り替える方向で相談を再開した。障害者手帳(精神)取得を視野に入れて就職活動をしたいとの申し出があったが、診断がついて半年たっていないなど手帳取得前に就職活動が必要な現状があり、近日開催される障害者雇用の就職フェアに参加し、相談するところまで進んでいる。最終的に、一般求人で就職活動し内定が得られた。

その後の経過

今回の事例によって整備された支援環境として、過去に医療機関での検査所見に基づき、キャリアセンター付教員として進路支援してきた例はあるが、学内で心理検査を購入し、実施できるようになったことで、きめ細やかな支援を検討することが可能になったことは大きな変化であると考えている。診断がついても、何を申し出てよいかわからない学生、何が合理的配慮なのかわからない教職員に対し、根拠を示すことができればと考えている。
専門性をもつ教員として個別対応しているが、現状では部署所属がないため、検査実施場所の確保、用具や記録が個人保管となる点は、今後検討が必要と考えている。

【参照】