15_学外実習における個別の困難に対する支援について

事例に学ぶ 紛争の防止・解決等につながる対応や取組

事例No.438(精神障害・他の精神障害)

申し出内容

神経性頻尿の症状として、90分から120分程度の時間間隔でお手洗いの時間を設定する必要がある。しかし、在宅訪問実習では長時間トイレに行けない場面が予想されるので、配慮をお願いしたい。また、周囲の学生に症状を知られないようにしたい。

配慮内容

90分から120分に1回の間隔でお手洗いの時間を確保するために、学科教員の車での移動により在宅訪問実習を実施する。

解説

病院実習など、学外との連携によって教育内容が形作られている場合、学内の関係者だけではなく、実習先の関係者との話し合いによる合理的配慮の合意形成が必要となります。大学の障害学生支援担当者は、その話し合いが建設的かつ円滑に進むようにコーディネートすることが必要です。学内外の関係者による話し合いでは、それぞれの利害が衝突しやすい場でもあります。障害者差別解消法の理念に基づいて、障害のある学生が他の学生と平等な研修の機会に最大限参加できるように、障害のある学生の学ぶ権利の保障の立場に立ったコーディネートが求められます。
一方で、特定の学生に対して、個別の移動支援などのサービスを提供することは、一般的に言って、大学にとって大きな負担となることもあり得ます(もちろん、その負担が本当に甚大なものかどうかを決めるのは大学であり、可能な範囲で柔軟な支援を提供することは、何ら問題はありません)。柔軟な支援を提供しつつも、他にも障害から来る困難を軽減する多様な選択肢がないかどうか、学生とともに建設的に考えておくことは、その後の社会参加の拡大を支えるためにも意義のあることです。
また、実習は、障害のある学生が将来の就労場面を想像しながら学ぶことのできる場でもあります。就労の場面においても、障害者雇用促進法により、雇用主には合理的配慮の提供が義務づけられています。障害のある学生は、将来の就労の場面でも、自ら雇用主に対して合理的配慮を求める建設的対話を行なうことになります。そのため実習は、障害のある学生自身が自己権利擁護のチャレンジをする場面としても意味があります。障害学生支援の担当者は、障害のある学生の自己権利擁護を支えるコーディネートを心がけることが重要です。

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