事例に学ぶ 紛争の防止・解決等につながる対応や取組
事例No.576(肢体不自由・下肢機能障害)
申し出内容
- 1. 車通学の許可及び身障者スペース付き(屋根付き)駐車場の確保
- 2. 車椅子を使用して教室で受講できるようにする。(教室へのアクセス、机の高さ、実習室の設備)
- 3. 体温調節のため、授業の途中でトイレに行くための許可
- 4. ベッド付き休憩室の設置
- 5. 車椅子で使用可能なトイレの設置
配慮内容
- 1. 屋根をつけるための予算を捻出することが困難で、代替の駐車スペースが存在するため、使用頻度の低い2箇所のスペースについては屋根を設置しないことで合意した。
- 2. 実習室の設備において、物理的に改修不可能な部分〔流し等〕があったため、完全な形での配慮提供ができなかった。
- 3. 申し出通りの配慮を提供した。
- 4. 申し出通りの配慮を提供した。
- 5. 配慮は一部提供された。通常の教室以外の大学の施設で実施される講義があり、その施設におけるトイレ設置希望があったが、関係する全ての階にトイレを設置する(既存のトイレを改修する)には莫大な費用がかかること、また、1箇所にトイレがあれば学生が移動して使用可能であることから、1箇所にのみ設置した。
解説
下肢の機能障害により、車椅子を使用している学生の事例です。車での通学の許可や体温調節のために授業中にトイレに行くことを認めるなど、必要な配慮を行なっています。その上で、屋根付きの駐車スペースやトイレの改修が必要になっていますが、全ての箇所についてニーズを満たすことが難しかったため、学生との対話を経て、部分的に改修を行なっています。施設・設備のバリアフリー化等は、場合によって多額の予算がかかることもあります。全てが整っていることが理想ですが、それが難しい場合でも出来ることから着手することは重要です。もちろん、その上で、段階的な改善を模索していくことは必要です。また、このような環境整備は、合理的配慮という文脈だけでなく、事前的改善措置として取り組むという視点も必要になるでしょう。教育機関はとても公共性の高い場所であると考えられ、今後も様々な利用者が使用することが想定されます。そのような状況に対して、組織としても基本的な環境整備の一環として、バリアフリー化を推し進める必要があるでしょう。