一緒に考えよう!合理的配慮の提供とは
「障害者差別解消法」施行に伴い、全ての大学等についても、不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮の提供が求められています。では、どんなことが不当な差別的取扱いにあたるのか、合理的配慮とは何なのか、その基本的な考え方について、わかりやすく解説します。
第10回 支援体制の整備について
ファシリテーター |
第10回は、支援体制の整備をとりあげます。障害のある学生への修学支援は、学生の状態や環境によって個別的で多様なものであると思いますが、そのような支援を進めるためには、学内においてある程度の支援体制があることが必要となるでしょう。ただし、支援体制の整備にあたっては、各大学の規模や状況によっても異なる部分もあるでしょう。今回は、いくつかの大学の実務担当者によるワークショップ形式で、大学における支援体制について考えます。
検討課題
- 組織的な対応の重要性
- 支援部署と専門担当者
- ネットワークの活用
登場人物紹介
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組織的な対応の重要性
ファシリテーター:障害学生の支援というのは、なにも授業や試験だけにとどまらず、心理的な悩みをはじめ、学生生活全般が対象になるでしょう。学生の困りごとによって、保健診療の窓口や学生相談の窓口なども相談をうける部署になると思いますが、ここでは、授業や試験での合理的配慮に関する支援体制について話し合う機会にしたいと思います。
Cさん:本学は以前から支援体制をもっています。もう10年くらいになりますが、年々障害学生のニーズも増えてきて、それに伴って何度か組織改編もしていますし、特に障害者差別解消法の施行をきっかけに、もう少しきちんとしたシステムをつくらなければいけない、という状況になっています。
Cさん:本学は私立大学ですが、今おっしゃった対応要領のようなものの必要性を感じ始めていますね。やはり、教職員全体の意識の差というものは少なからずありますので、特に合理的配慮を提供していくための基本的な理念やシステムについて学内のルールを整備しておきたいというところです。
Bさん:規程というところまでは全然考えていませんでした。やはり、そういうことから始めたほうが良いでしょうか。
Bさん:なるほど。その認識は大切になりそうです。視覚障害のある方が入学するということが決まったときも、学内で色々な意見があったのも事実です。もちろん、前向きに支援を考えていこうということにはなったのですが、実は本人と話をしていると、必要な支援の内容が少し専門的で、専門的なノウハウのない本学としては、その点で頭を悩ませています。
支援部署と専門担当者
Bさん:専門のコーディネーターを配置されているんですね。本学は小規模の大学なので、最初からそのようにするのは難しそうですが、やはり専門性のある方が必要になるでしょうか。
Aさん:本学でも支援部署を設置して、コーディネーターを配置しましたが、少し問題が生じています。実は、支援部署ができたことによって、障害学生の支援はその部署任せというような雰囲気になってしまっているのです。ニーズも増えてきているので、この状況だと支援部署としての負担が大きくなってしまいます。
Cさん:コーディネーターの存在は本当に心強いですが、一方でそのような専門的な人材を有期雇用で配置しているという現状があって、支援体制の安定性という面が課題になっています。もちろん、引き継ぎ等は行なっていくわけですが、新しく配置された方が必ずしも大学のなかでの支援というものを理解しているわけではなく、また、障害学生との信頼感・関係性という側面でもやや懸念があるのが事実です。
Bさん:なるほど。今は専門の担当者がいませんが、少なくとも障害学生が支援をどのように申し出れば良いのか、誰に相談すれば良いのかなどは、きちんと決めておきたいと思います。また、対応のノウハウがその場限りにならないように、学内で蓄積していけるような体制を考えてみたいと思います。
ネットワークの活用
Cさん:本学のある地域では、以前から障害学生支援の担当者が集まる懇談会が実施されてきました。他大学の状況を知ることができますし、何より本学では対応したことのない事例について、すでにノウハウをもっている大学から対応方法を教えてもらうことは、とても有り難いです。
Bさん:本学でも地域のネットワークを探してみたいと思います。地域以外にも、障害種別のネットワークや全国的な研修などもあるのでしょうか。
ファシリテーター:もちろん様々なネットワークがあるので、是非利用してみてください。例えば、聴覚障害の関係だとPEPNet-Japanがありますし、全国的な研修であればJASSOも様々なセミナー等を開催しています。また、障害学生支援の実践や最新の動向を知る機会としては、AHEAD JAPANの活動などにも参加してみると良いかもしれないですね。もちろん、他にも様々なネットワークがあります。障害学生のためにも学内にあるノウハウだけで対応するというのは勿体ないので、是非、ネットワークの活用も考えてください。
以上の点について、詳細は、以下の「紛争の防止・解決等のための基礎知識(1)大学等における基本的な考え方」でも解説していますので、ご参照ください。
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