事例紹介
事例が起きた時期
令和元年度
発生時期:授業開始後
事例が起きた学校
私立大学、学校規模:10,000人以上
対象学生
学科(専攻):社会科学、年次:4、障害種:精神障害(他の精神障害)
支援の申し出
1.支援の申し出の受付
- 支援の申し出:有
- 申し出を受けた部署(者):学生生活支援担当部署
- 支援の申し出を受け付ける申請書(様式):有
- ニーズ聴き取りのための面談:実施した
2.支援が必要とされた場面
授業・研究指導 試験の評価、単位取得、卒業要件等
申し出への対応
1.配慮内容の決定について
- 配慮の提供に関する学内関係部署の検討・協議:実施した
- 検討協議に参加した部署(者):障害学生支援部署 教務担当部署 教育部門 評議員
- 配慮内容の決定過程:建設的対話を通じて学生との合意の上で行なった
- 学内関係部署への配慮依頼文書の配付:実施した
2.配慮内容決定後のモニタリング・フォローアップ
- 当該学生に対して、感想・不満等の聞き取りを行なった
- 当該学生に対して、定期面談を行なっている
- その後の状況に関して、関係部署(者)に聴取、情報共有を行なっている
相談内容
記入なし
申し出内容と配慮の提供
申し出内容1:集中力の低下(焦燥感の出現)により、長時間椅子に座れないため、授業中に何度か入退室をさせて欲しい(試験においては、別室受験とともに、離席を許可して欲しい)。
- 提供した配慮:申し出通りの配慮
- 配慮内容決定時での合意形成:できた
- 合意形成できたと考える根拠:本人の申し出通りの配慮を提供したため。
- 提供した配慮の具体的内容:各科目担当教員から必要に応じて退室・離席して良い(その後入室して良い)と直接、本人に対して説明した(本人の不安も解消した)。
- 事後評価:ニーズを満たし、学生も満足している
- 事後評価の理由・詳細:本人から、こうした配慮を受けることに対して、印象や評価が悪くなるのではないかとの不安があったが、上記の通り、教員から歩み寄ることを実施したことで、本人の不安や状態の悪化を防いだと思われるため。
申し出内容2:言語処理、情報処理に集中力を要する場合、以前より解答に時間がかかるため、授業内試験、期末試験において、解答方法の配慮(一問一答形式への変更や、レポート課題への代替)をして欲しい。
- 提供した配慮:学校が提案した配慮=学部からは、解答方法への配慮について、教育の本質の変更にならない限りは対応するという代替案が示された(各科目の配慮内容については、科目担当教員に一任された)。
- 配慮内容決定時での合意形成:1つの科目以外については、合意形成できた。
- 合意形成できたと考える根拠:本人の意向を尊重し、科目ごとに具体的な配慮内容の調整のための面談を行なったため。
- 提供した配慮の具体的内容:多くの科目で、期末試験を期末レポートに変更した。一科目のみ、他の配慮(時間延長)があることを理由に、当該配慮まで行なえば、同等以上の機会提供となるとして、対話を拒否したケースがあった。
- 事後評価:ニーズを満たせなかったが、学生は理解し、我慢している
- 事後評価の理由・詳細:配慮の不提供を告げられただけになっており、納得できないとの発言があった(ただし、当該科目は、卒業所要単位の取得状況全体を見た際に、影響が少なかったため、他の科目に集中するとの発言もあった)。
申し出内容3:言語処理、情報処理に集中力を要する場合、以前より解答に時間がかかるため、授業内試験、期末試験において、時間延長を許可して欲しい。
- 提供した配慮:申し出通りの配慮
- 配慮内容決定時での合意形成:できた
- 合意形成できたと考える根拠:本人の申し出通りの配慮を提供したため。
- 提供した配慮の具体的内容:試験では、時間延長(1.3倍)を行なった。
- 事後評価:ニーズを満たし、学生も満足している
- 事後評価の理由・詳細:集中力の低下(焦燥感)への配慮として、ありがたいという回答を得ている。
申し出内容4:授業中の離席・退室や、不定期の通院による欠席等をした際、試験等に関する重要な情報があった場合、後日、書面やメモ、資料等で通知して欲しい。
- 提供した配慮:申し出通りの配慮
- 配慮内容決定時での合意形成:できた
- 合意形成できたと考える根拠:本人の申し出通りの配慮を提供したため。
- 提供した配慮の具体的内容:期末試験(レポートに代替したものを含む)の内容については、個別に教員から説明をする機会を確保した。
- 事後評価:ニーズを満たし、学生も満足している
- 事後評価の理由・詳細:個別に質問をすることができ、安心したとの回答を得ている。
配慮内容決定に至る状況(不服、不満、苦情の申し立て)
- 不服、不満、苦情等申し立て:あった
- 申し立てを受けた部署:障害学生支援部署
- 申し立て内容:配慮申請手続きを開始してから2か月以上経つにもかかわらず、合理的配慮の内容について検討する面談が行なわれず、所属学部からの配慮内容に関する意見も出てこないため、止む無く、配慮の提供なしで受講している。
(2か月間の詳細:障害学生支援に関する学部担当者(教員・担当教員でもある)からの報告(本人の障害や希望する配慮)を、教務事項を担当する別の学部担当者(教員)が受取拒否した状況が1か月半続いた後、教務事項を担当する学部担当者によって、改めて障害の状況や希望する配慮内容についての聴取が実施された) - 申し立てへの対応に関わった部署:障害学生支援部署 学生生活支援担当部署 教育部門(学部、担当教員等)評議員
- 申し立てへの対応手順:1)障害学生支援コーディネーターより、障害学生支援の事務を担当する学生生活支援担当部署の長(所長・教員)に事態を報告。学生生活支援担当部署の所長より、学生の所属学部に改善の必要がある旨通知し、打ち合わせを打診。同時に、教務担当部署の長(所長・教員)にも情報を共有。当該所長は学長に報告。学長から、評議会の評議員2名(学生の所属学部教員)に対応を打診。
2)所属学部から学部長、評議員2名の出席の元、対応を協議。評議員が以後の対応(面談、各科目担当教員への交渉)を、障害学生支援コーディネーターと協力して行なうことになった。 - 申し立てへの対応内容:評議員が学生と面談(障害学生支援コーディネーター同席)し、障害の状況と意向を確認。当該面談の冒頭、学部長より未対応期間が長く、迷惑をかけたことに対する謝罪があった。面談後、評議員より、科目担当教員への調整(配慮案に対する合意の取り付け)を行なった。合意を促進する目的で、教授会にて「教育の本質を低めない限りにおいて、各科目担当教員がどのように対応しても、その責任は問わない」との決議を行なった。また、配慮内容の詳細なアレンジを目的に、代替レポートを出す予定の科目については、個別に面談の機会を持ち、各科目の達成目標や評価基準の確認と、学生本人の意向尊重を図った。
- 対応に関する学生の反応:納得して、問題なく修学している
- 学生の反応の具体的内容:学部長、評議員、対話に応じた科目担当教員、担当教員(担任)へは感謝しているが、通知文を出しただけで、対話を拒否した教員へは不信感を持ったままになった。
- 学外機関との連携:連携・協議し配慮を調整
- 連携・協議の具体的内容:京大HEAPに以下の助言を求めた。
・教育の本質を考える際、記憶力を前提にして良いか
・対話を拒否した教員への対応方法があるか
学内にはまだ第三者組織がないため、文科省の相談窓口や人権擁護機関を紹介した。
その後の経過、課題等
学生は高次脳機能障害で、試験のレポート提出への代替、試験時間の延長のどちらも希望していたが、どちらかというと現存する自分の能力を活かせる方法ということでレポート提出への代替をより希望していた。卒業間近で障害を負ったため、残り科目は多くなく、1科目を除きレポート提出に変更されたが、1科目については、教員の独自の判断で、時間延長だけで十分で解答方法の変更や資料の持ち込みは認めないということになった。学内でこうしたことについての指揮権が確定しておらず、教員も説得を拒否したため、本人の望む配慮は得られなかった。結果としてこの科目は単位が取れなかった。学外機関を紹介したが、その単位は卒業には影響せず、本人もリハビリに集中したいため、そこまでには及ばないということで、その後特に不服申し立ては行なわなかった。