1.回収状況
(1)学校単位の回収状況
本調査の対象校数、返送校数、協力校数ならびに協力率を表2に示す。対象校数は調査協力依頼を送付した学校数を示す。返送校数は調査協力の可否について回答した学校数を示す。協力校数は調査協力可と回答した学校数を示す。協力率は協力校数を返送校数で除算して100を乗ずることで計算した。
表2より、調査協力の可否について回答した大学のうち、約37.8%(152校)が本調査研究に協力した。協力校の構成比としては国立大学が約66.0%と最も多かった。
区分 | 対象校数(校) | 返送校数(校) | 協力校数(校) | 協力率(%) |
---|---|---|---|---|
国立大学 | 86 | 50 | 33 | 66.0 |
公立大学 | 93 | 54 | 20 | 37.0 |
私立大学 | 613 | 298 | 99 | 33.2 |
計 | 792 | 402 | 152 | 37.8 |
(2)学生単位の回収状況
本調査の対象学生数、回答者数ならびに回答率を表3に示す。対象学生数は調査協力可と回答した大学の担当者により、学生に配布あるいは通知するために必要な部数として申告された数を示す。回答者数はWEB調査システムに回答のあった数を示す。回答率は回答者数を対象学生数で除算して100を乗ずることで計算した。
表3より、調査協力可とした大学で配布または通知可能とした対象学生数のうち、約8.5%(243名)から回答を得た。以降は、回答者を学生とみなして分析した。
区分 | 対象学生数(人) | 回答者数(人) | 回答率(人) |
---|---|---|---|
国立大学 | 1008 | 53 | 5.3 |
公立大学 | 185 | 6 | 3.2 |
私立大学 | 1651 | 105 | 6.4 |
不明 | 79 | ||
計 | 2844 | 243 | 8.5 |
2.データの取り扱い
本調査により得られた学生からの回答内容に対する信頼性を担保するために、研究責任者と研究分担者1名が独立して、下記の手順でデータの抽出・コーディング作業を行った。その後、2名の抽出・コーディング作業結果を照合した。2名で異なる結果となった場合には協議により、適当と判断される結果を採用した。
(1)データの抽出基準
下記の条件に該当するデータを抽出した。
ア)WEB調査システムを完了していること
イ)「5:障害名」または「6:障害分類」に回答があること
ウ)支援内容が「7:支援内容」を含めた質問項目から読み取れること
エ)「13:満足度評価」の回答があること
(2)障害分類のコーディング
「5:障害名」の自由記述と「6:障害分類」に関するチェック内容を照合して、障害分類のコーディング作業を下記の通り行った。
ア)複数の「6:障害分類」にチェックがついている場合には、「5:障害名」の自由記述を参照し、「5:障害名」の自由記述に即した障害分類とした。
イ)「6:障害分類」が未回答の場合には、「5:障害名」の自由記述に即した分類で「診断あり」とした。
ウ)「6:障害分類」のうち、「肢体不自由(上肢機能障害)」と「肢体不自由(下肢機能障害)」の両方に回答がある場合には、「5:障害名」の自由記述を参照し、「肢体不自由(上下肢機能障害)」とした。
エ)「6:障害分類」のうち、「視覚障害(盲)」と「視覚障害(弱視)」あるいは「聴覚障害(聾)と「聴覚障害(難聴)」の両方に「診断あり」と回答がある場合には、「視覚障害(盲)」あるいは「聴覚障害(聾)」のみ「診断あり」とした。
オ)「6:障害分類」のうち、「視覚障害(盲)」と「視覚障害(弱視)」あるいは「聴覚障害(聾)」と「聴覚障害(難聴)」の一方に「診断あり」、他方に「診断なし+傾向あり」と回答がある場合には、「診断あり」のみを残した。
カ)「6:障害分類」のうち、「視覚障害(盲)」と「視覚障害(弱視)」あるいは「聴覚障害(聾)」と「聴覚障害(難聴)」の両方に「診断なし+傾向あり」と回答がある場合には、そのまま残した。
キ)「5:障害名」の自由記述と「6:障害分類」に相違がある場合には、「5:障害名」の自由記述に即した障害分類とした。
(3)支援内容のコーディング
JASSO実態調査の授業支援ならびに授業以外の支援の項目に基づき、支援内容のコーディングを行った。授業支援の場合には「1」を、授業以外の支援の場合には「2」を各コードの冒頭に付した。なお、本調査では1人の学生が複数の支援内容について回答することができた。複数の支援内容について回答した場合には、各学生の属性データを付与して、それぞれ独立回答として処理した。すなわち、支援内容については回答した学生が重複する場合がある。また、1つの回答の中に複数の支援内容が記述として含まれる場合には分離せず、1つの回答に複数の支援内容のコードを付した。
ア)「7:支援内容」に記載はないが、他の項目に支援内容と思われる記載がある場合には、記載内容を支援内容とみなした。
イ)支援内容が「情報保障」のみの場合には、「ノートテイク等」および「パソコンテイク」の両方に分類した。
ウ)JASSO実態調査の分類において、下記の項目は分類名称の変更を行った。
- 「1_1_点訳・墨訳等」:触地図を含めるため変更した。
- 「1_4_ガイドヘルプ・移動支援」:歩行訓練などガイドヘルプ以外の移動支援を含めるため変更した。
- 「1_7_ノートテイク等」:筆談を含めるため変更した。
- 「1_13_パソコン等の持込使用許可」:タブレット端末を含めるため変更した。
- 「1_14_試験時注意事項等文書伝達」:試験時に限ることを明瞭にするため変更した。
- 「1_16_学内実技・実験等配慮」:「1_27_学外実習・フィールドワーク配慮」と区別するため変更した。
- 「1_22_障害・配慮事項の伝達」:配慮依頼文書の配布に加えて、口頭や文書による障害を有することや配慮事項の伝達を含めるため変更した。
- 「1_29_耳栓・イヤホン等の使用」:耳栓やノイズキャンセリングイヤホン等の使用に関するもの
- 「1_30_コミュニケーション上の配慮」:授業中の指名を避けることや、授業中のグループワーク等の配慮に関するもの
- 「1_31_その他支援技術・補助具の使用」:クッションや視覚補助具など、JASSO実態調査で示されるもの以外の支援技術・補助具の使用に関するもの
- 「1_32_資料データの提供」:テキストデータ化以外の資料提供(PDF化、紙媒体配布等)に関するもの
- 「1_33_口頭説明の視覚化」:授業中の口頭指示による説明をレジュメに印字する等の口頭説明の視覚化に関するもの
- 「1_34_制度の変更」:長期履修制度など一般的な学籍制度とは異なる制度等を利用に関するもの
- 「1_35_代筆」:文書の代筆等に関するもの
- 「1_36_離席・入退室許可」:授業中の離席や授業開始・終了時刻とは異なる入退室の許可に関するもの
- 「1_37_水分・栄養剤等の摂取許可」:授業・試験中の水分や栄養剤等の摂取の許可に関するもの
- 「2_20_バリアフリー対応」:教室・構内の物理的な環境整備やバリアフリー化に関するもの
(4)その他のコーディング
誤入力の可能性がある回答については、他の質問項目の回答内容を確認した上で必要に応じて修正を行った。
3.学生の属性
(1)課程・学年別
学生の課程・学年を表4に示す。課程は質問項目「2:課程」の回答内容を示す。学年は質問項目「4:学年」の回答内容を示す。構成比について、課程の場合は全障害学生のうちに占める割合を示し、学年の場合は当該課程に在籍する全障害学生のうちに占める割合を示す。
表4より、回答学生で最も多い課程は「学部(通学課程)」(228名:約93.8%)であり、次いで「大学院(通学制)」(14名:約5.8%)であった。「学部(通学課程)」のうち、最も多い学年は「2年」(64名:約28.1%)であり、次いで「1年」(59名:約25.9%)、「4年」(57名:約25.0%)、「3年」(43名:約18.9%)であった。
区分 | 障害学生数(人) | 構成比(%) |
---|---|---|
学部(通学課程) | 228 | 93.8 |
うち1年生 | 59 | 25.9 |
うち2年生 | 64 | 28.1 |
うち3年生 | 43 | 18.9 |
うち4年生 | 57 | 25.0 |
うち不明・未回答 | 5 | 2.2 |
学部(通信教育課程) | 0 | |
大学院(通学制) | 14 | 5.8 |
うち博士前期/修士課程1年相当 | 7 | 50.0 |
うち博士前期/修士課程2年相当 | 3 | 21.4 |
うち博士後期課程相当 | 3 | 21.4 |
うち不明・未回答 | 1 | 7.1 |
大学院(通信教育課程) | 0 | |
専攻科 | 0 | |
不明/未回答 | 1 | 0.4 |
計 | 243 |
(2)学科・専攻別
学生の所属学科・専攻を表5に示す。所属学科・専攻は「3:所属名」の自由記述」に基づき、文部科学省令和元年度学校基本調査学科系統分類表により分類した。構成比について、大分類の場合は全障害学生のうちに占める割合を示し、中分類の場合は当該大分類に属する全障害学生のうちに占める割合を示す。
表5より、回答学生で最も多い学科・専攻は「社会科学」(54名:約22.2%)であり、次いで「人文科学」(50名:約20.6%)であった。
区分 | 障害学生数(人) | 構成比(%) |
---|---|---|
人文科学 | 50 | 20.6 |
うち哲学関係 | 18 | 36.0 |
うち文学関係 | 15 | 30.0 |
うち史学関係 | 5 | 10.0 |
うちその他 | 12 | 24.0 |
社会科学 | 54 | 22.2 |
うち社会学関係 | 24 | 44.4 |
うち商学・経済学関係 | 16 | 30.0 |
うち法学・政治学関係 | 8 | 14.8 |
うちその他 | 6 | 11.1 |
理学 | 11 | 4.5 |
工学 | 28 | 11.5 |
うち電気通信工学関係 | 11 | 39.3 |
うちその他 | 17 | 60.7 |
農学 | 12 | 4.9 |
保健(医・歯学) | 4 | 1.6 |
保健(医・歯学を除く) | 24 | 9.9 |
うち薬学関係 | 8 | 33.3 |
うち看護学関係 | 4 | 16.7 |
うちその他 | 12 | 50.0 |
商船 | 0 | |
家政 | 0 | |
教育 | 18 | 7.4 |
芸術 | 7 | 2.9 |
その他 | 31 | 12.8 |
うち人文・社会科学関係 | 13 | 41.9 |
うちその他 | 18 | 58.1 |
不明/未回答 | 4 | 1.6 |
計 | 243 |
(3)障害分類
ア)学生の障害分類
学生の障害分類を表6に示す。障害分類はコーディング作業の結果に基づき、集計された。構成比は、全障害学生あるいは当該障害分類に属する全障害学生のうちに占める割合を示す。
表6より、回答学生で最も多い障害(診断あり)は「聴覚障害」(69名:約28.4%)であり、次いで「肢体不自由」(51名:約21.0%)、「発達障害」(49名:約20.2%)、「精神障害」(42名:約17.3%)、「視覚障害」(26名:約10.7%)、「慢性疾患・内部障害」(21名:約8.6%)、「その他の障害」(9名:約3.7%)、「言語障害」(5名:約2.1%)であった。「その他の障害」の内訳としては、手掌多汗症、過敏性腸症候群、聴覚情報処理障害(APD)などが含まれた。また、回答学生のうち、医学的診断を有しないが、何らかの障害の傾向がある学生は8名(約3.3%)であった。
表6の結果から考えられる考察として、WEB調査システムという回答方法により、障害種別の回答しやすさ、回答しにくさが影響している可能性が考えられた。例えば、「聴覚障害」のある学生の場合は音声聞き取りを伴わないWEB調査システムに回答しやすかった可能性が考えられる。一方で、「発達障害」や「精神障害」などはJASSO実態調査において構成比が比較的多い障害種別であるが、調査項目の文意の読み取りが苦手であった可能性や時間配分の見通しが持てない等の理由により、回答の完了が困難であった可能性も考えられる。また、「視覚障害」の場合には視覚的な操作を主とするWEB調査システムでは音声読み上げソフトを利用した場合においても、回答が容易ではない可能性が考えられた。
区分 | 障害学生数(人) | 構成比(%) |
---|---|---|
視覚障害 | 26 | 10.7 |
うち盲 | 8 | 30.8 |
うち弱視 | 18 | 69.2 |
聴覚障害 | 69 | 28.4 |
うち聾 | 22 | 31.9 |
うち難聴 | 47 | 68.1 |
言語障害 | 5 | 2.1 |
肢体不自由 | 51 | 21.0 |
うち上肢機能障害 | 2 | 3.9 |
うち下肢機能障害 | 12 | 23.5 |
うち上下肢機能障害 | 37 | 72.6 |
うち他の機能障害 | 11 | 21.6 |
慢性疾患・内部障害 | 21 | 8.6 |
発達障害 | 49 | 20.2 |
うち限局性学習症(SLD) | 4 | 8.2 |
うち注意欠如・多動症(ADHD) | 25 | 51.0 |
うち自閉スペクトラム症(ASD) | 33 | 67.4 |
精神障害 | 42 | 17.3 |
うち統合失調症等 | 4 | 9.5 |
うち気分障害 | 15 | 35.7 |
うち神経症性障害等 | 23 | 54.8 |
うち摂食障害・睡眠障害等 | 6 | 14.3 |
うち他の精神障害 | 5 | 11.9 |
その他の障害 | 9 | 3.7 |
診断なし+傾向あり | 8 | 3.3 |
計 | 243 |
イ)学生の重複する障害分類
学生の障害分類のうち、重複のある組み合わせと件数を表7-1及び表7-2に示す。
表7-1及び表7-2より、学生の障害分類のうち、最も重複する組み合わせは「肢体不自由(上下肢機能障害)」と「肢体不自由(他の機能障害)」の診断あり(11名)および「発達障害(ASD)」と「発達障害(ADHD)」の診断あり(11名)であった。次いで、「発達障害(ASD)」と「精神障害(神経症性障害等)」の診断あり(6名)および「発達障害(ADHD)」と「精神障害(気分障害)」のいずれか診断あり(6名)であった。
表7-1及び表7-2の結果から考えられる考察として、発達障害同士の重複や発達障害と精神障害の重複が比較的多く、後述する支援内容の傾向にも影響している可能性が考えられた。
区分 | 障害学生数(人) |
---|---|
弱視と難聴 | 1 |
弱視と上下肢機能障害 | 1 |
聾とADHD | 2 |
聾と気分障害 | 1 |
難聴と慢性疾患・内部障害 | 2 |
難聴と神経症性障害等 | 1 |
難聴とその他の障害 | 1 |
言語障害と上下肢機能障害 | 3 |
言語障害と神経症性障害等 | 2 |
下肢機能障害と慢性疾患・内部障害 | 1 |
下肢機能障害と統合失調症等 | 1 |
下肢機能障害と他の精神障害 | 1 |
上下肢機能障害と他の機能障害 | 11 |
上下肢機能障害と慢性疾患・内部障害 | 2 |
上下肢機能障害と他の精神障害 | 1 |
上下肢機能障害とその他の障害 | 1 |
他の機能障害と慢性疾患・内部障害 | 1 |
他の機能障害と他の精神障害 | 1 |
慢性疾患・内部障害とASD | 2 |
慢性疾患・内部障害と神経症性障害等 | 2 |
慢性疾患・内部障害と摂食障害・睡眠障害等 | 1 |
慢性疾患・内部障害とその他の障害 | 1 |
SLD とADHD | 2 |
SLD とASD | 1 |
SLD と神経症性障害等 | 1 |
SLD と摂食障害・睡眠障害等 | 1 |
ADHD とASD | 11 |
ADHD と気分障害 | 5 |
ADHD と神経症性障害等 | 5 |
ADHD と摂食障害・睡眠障害等 | 2 |
ADHD とその他の障害 | 1 |
ASD と統合失調症等 | 1 |
ASD と気分障害 | 2 |
ASD と神経症性障害等 | 6 |
ASD と他の精神障害 | 1 |
統合失調症等と神経症性障害等 | 1 |
統合失調症等と摂食障害・睡眠障害等 | 1 |
気分障害と神経症性障害等 | 5 |
神経症性障害等と摂食障害・睡眠障害等 | 3 |
神経症性障害等と他の精神障害 | 1 |
摂食障害・睡眠障害等とその他の障害 | 1 |
区分 | 障害学生数(人) |
---|---|
弱視と難聴 | 1 |
弱視と上下肢機能障害 | 1 |
弱視と他の機能障害 | 1 |
聾と神経症性障害等 | 1 |
難聴とASD | 1 |
上下肢機能障害と他の機能障害 | 1 |
上下肢機能障害とADHD | 2 |
上下肢機能障害とASD | 1 |
上下肢機能障害と神経症性障害等 | 2 |
他の機能障害と神経症性障害等 | 1 |
慢性疾患・内部障害とADHD | 1 |
慢性疾患・内部障害とASD | 1 |
慢性疾患・内部障害と気分障害 | 2 |
慢性疾患・内部障害と神経症性障害等 | 1 |
慢性疾患・内部障害と摂食障害・睡眠障害等 | 2 |
SLD とADHD | 1 |
SLD とASD | 5 |
SLD とその他の障害 | 1 |
ADHD とASD | 2 |
ADHD と統合失調症等 | 2 |
ADHD と気分障害 | 6 |
ADHD と神経症性障害等 | 2 |
ADHD と摂食障害・睡眠障害等 | 1 |
ADHD とその他の障害 | 1 |
ASD と気分障害 | 5 |
ASD と神経症性障害等 | 4 |
ASD と摂食障害・睡眠障害等 | 2 |
統合失調症等と神経症性障害等 | 1 |
気分障害と神経症性障害等 | 5 |
気分障害と摂食障害・睡眠障害等 | 5 |
神経症性障害等と摂食障害・睡眠障害等 | 2 |
神経症性障害等とその他の障害 | 1 |
摂食障害・睡眠障害等とその他の障害 | 1 |