支援提供プロセス

1.学生の申し出た/提供された支援内容

(1)学生の申し出た/提供された授業支援

ア)授業支援の内訳

学生の申し出た/提供された授業支援の内訳を表8に示す。1人の学生が複数の支援内容について回答することができたため、支援内容は件数として示す。授業支援の内訳はコーディング作業の結果に基づき、集計された。構成比は、該当する全授業支援件数のうちに占める割合を示す。
表8より、回答学生で最も多く関連する授業支援は「1_8_パソコンテイク」(34件:約10.1%)であり、次いで、「1_7_ノートテイク等」(33件:約9.8%)、「1_11_試験時間延長・別室受験」(30件:約8.9%)であった。
表8の結果から考えられる考察として、回答した学生の障害分類で「聴覚障害」が最も多いため、パソコンテイク等の授業支援が多く記述されたと考えられた。

表8 学生の申し出た/提供された授業支援の内訳

区分 件数(件) 構成比(表%)
1_1_点訳・墨訳等 1 0.3
1_2_教材のテキストデータ化 12 3.6
1_3_教材の拡大 11 3.3
1_4_ガイドヘルプ・移動支援 11 3.3
1_5_リーディングサービス 1 0.3
1_6_手話通訳 14 4.2
1_7_ノートテイク等 33 9.8
1_8_パソコンテイク 34 10.1
1_9_ビデオ教材字幕付け 5 1.5
1_10_チューター又はティーチングアシスタントの活用 4 1.2
1_11_試験時間延長・別室受験 30 8.9
1_12_解答方法配慮 6 1.8
1_13_パソコン等の持込使用許可 10 3.0
1_14_試験時注意事項等文書伝達 2 0.6
1_15_使用教室配慮 5 1.5
1_16_学内実技・実験等配慮 10 3.0
1_17_教室内座席配慮 25 7.4
1_18_FM補聴器・マイク使用 18 5.4
1_19_専用机・イス・スペース確保 9 2.7
1_20_読み上げソフト・音声認識ソフト使用 17 5.1
1_21_講義に関する配慮 13 3.9
1_22_障害・配慮事項の伝達 29 8.6
1_23_出席に関する配慮 24 7.1
1_24_学習指導 2 0.6
1_25_授業内容の代替、提出期限延長等 20 6.0
1_26_履修支援 5 1.5
1_27_学外実習・フィールドワーク配慮 8 2.4
1_28_その他 5 1.5
1_29_耳栓・イヤホン等の使用 7 2.1
1_30_コミュニケーション上の配慮 9 2.7
1_31_その他支援技術・補助具の使用 7 2.1
1_32_資料データの提供 10 3.0
1_33_口頭説明の視覚化 6 1.8
1_34_制度の変更 3 0.9
1_35_代筆 2 0.6
1_36_離席・入退室許可 4 1.2
1_37_水分・栄養剤等の摂取許可 5 1.5
336

イ)障害分類と授業支援の関連

障害分類と授業支援の関連(構成比)を表9に示す。ここでは、学生数が10名を超える障害分類であり、かつ、構成比が10%を超える結果を記述する。
表9より、視覚障害のある学生では「1_2_教材のテキストデータ化」(約42.3%)を最も多く挙げていた。聴覚障害のある学生では「1_8_パソコンテイク」(約43.5%)を最も多く挙げていた。肢体不自由のある学生では「1_11_試験時間延長・別室受験」(約27.5%)を最も多く挙げていた。内部障害のある学生では「1_23_出席に関する配慮」(約23.8%)を最も多く挙げていた。発達障害のある学生では「1_22_障害・配慮事項の伝達」(約24.5%)を最も多く挙げていた。精神障害のある学生では「1_25_授業内容の代替、提出期限延長等」(約28.6%)を最も多く挙げていた。
表9の結果から考えられる考察として、視覚障害のある学生では授業中の資料情報、聴覚障害のある学生では授業中の音声情報など各障害によりアクセスが困難な授業情報を保障する支援を多く挙げる傾向があると考えられた。肢体不自由のある学生では上肢等の機能障害に伴って他学生と同一の試験時間では回答が完了しないこと等の理由により、試験時間の延長を求める傾向があると考えられた。内部障害のある学生では通院に伴い授業の出席に関する配慮を求める傾向があると考えられた。発達障害のある学生では自身の障害や配慮事項を教職員に伝達することで障害に対する理解を求める傾向があると考えられた。精神障害のある学生では不安や緊張を緩和するため、発表やプレゼンテーション等の免除や代替を求める傾向があると考えられた。

表9 障害分類と授業支援の関連(構成比)

区分 視覚障害 聴覚障害 言語障害 肢体不自由 内部障害 発達障害 精神障害 その他の障害
1_1_点訳・墨訳等 3.8
1_2_教材のテキストデータ化 42.3 2.0
1_3_教材の拡大 34.6 2.0
1_4_ガイドヘルプ・移動支援 11.5 1.4 13.7 4.8
1_5_リーディングサービス 2.0
1_6_手話通訳 18.8 2.0 2.4
1_7_ノートテイク等 37.7 9.8 9.5 6.1 7.1 11.1
1_8_パソコンテイク 43.5 2.0 4.1 4.8
1_9_ビデオ教材字幕付け 5.8 2.0 2.4 11.1
1_10_チューター又はティーチングアシスタントの活用 3.9 4.1 4.8
1_11_試験時間延長・別室受験 19.2 2.9 27.5 14.3 18.4 4.8 22.2
1_12_解答方法配慮 3.8 7.8 11.1
1_13_パソコン等の持込使用許可 19.2 3.9 4.1
1_14_試験時注意事項等文書伝達 2.9
1_15_使用教室配慮 3.8 7.8
1_16_学内実技・実験等配慮 3.8 40.0 11.8 9.5 2.4
1_17_教室内座席配慮 11.6 9.8 19.1 4.1 16.7 22.2
1_18_FM補聴器・マイク使用 26.1 2.0
1_19_専用机・イス・スペース確保 3.8 11.8 4.8 2.4
1_20_読み上げソフト・音声認識ソフト使用 15.4 18.8 20.0 2.0 4.8
1_21_講義に関する配慮 11.5 2.9 7.8 4.1 9.5
1_22_障害・配慮事項の伝達 4.3 5.9 14.3 24.5 23.8
1_23_出席に関する配慮 20.0 3.9 23.8 14.3 26.2
1_24_学習指導 2.0 2.0
1_25_授業内容の代替、提出期限延長等 4.3 5.9 4.8 16.3 28.6 11.1
1_26_履修支援 3.8 1.4 2.0 4.1
1_27_学外実習・フィールドワーク配慮 1.4 2.0 10.2 2.4
1_28_その他 3.8 2.9 2.0 2.0
1_29_耳栓・イヤホン等の使用 4.8 10.2 4.8 11.1
1_30_コミュニケーション上の配慮 20.0 2.0 12.2 11.9
1_31_その他支援技術・補助具の使用 11.5 3.9 11.1
1_32_資料データの提供 34.6 2.0
1_33_口頭説明の視覚化 4.3 6.1 2.4
1_34_制度の変更 7.1
1_35_代筆 3.9
1_36_離席・入退室許可 3.9 4.1 2.4
1_37_水分・栄養剤等の摂取許可 20.0 2.0 14.3 2.4
障害学生数 26 69 5 51 21 49 42 9

(2)学生の申し出た/提供された授業以外の支援

ア)授業以外の支援の内訳

学生の申し出た/提供された授業以外の支援の内訳を表10に示す。1人の学生が複数の支援内容について回答することができたため、支援内容は件数として示す。授業以外の支援の内訳はコーディング作業の結果に基づき、集計された。構成比は、該当する全授業以外の支援件数のうちに占める割合を示す。
表10より、回答学生で最も多く関連する授業以外の支援は「2_20_バリアフリー対応」(12件:約25.5%)であり、次いで、「2_8_専門家によるカウンセリング」(9件:約19.2%)、「2_5_自己管理指導」(8件:約17.0%)であった。

表10 学生の申し出た/提供された授業以外の支援内容の内訳

区分 件数(件) 構成比(%)
2_1_居場所の確保 1 2.1
2_2_通学支援 3 6.4
2_3_個別支援情報の収集 0
2_4_情報取得支援 1 2.1
2_5_自己管理指導 8 17.0
2_6_対人関係配慮 0
2_7_日常生活支援 1 2.1
2_8_専門家によるカウンセリング 9 19.2
2_9_医療機関との連携 0
2_10_医療機器、薬剤の保管等 0
2_11_休憩室・治療室の確保等 2 4.3
2_12_生活介助 6 12.8
2_13_介助者の入構、入室許可 0
2_14_キャリア教育 0
2_15_障害学生向け求人情報の提供 1 2.1
2_16_就職支援情報の提供、支援機関の紹介 4 8.5
2_17_インターンシップ先の開拓 0
2_18_就職先の開拓、就職活動支援 0
2_19_その他 4 8.5
2_20_バリアフリー対応 12 25.5
47

イ)障害分類と授業以外の支援の関連

障害分類と授業以外の支援の関連(構成比)を表11に示す。ここでは、学生数が10名を超える障害分類であり、かつ、構成比が10%を超える結果を記述する。
表11より、肢体不自由のある学生では「2_20_バリアフリー対応」(約23.5%)を最も多く挙げていた。発達障害のある学生では「2_5_自己管理指導」および「2_8_専門家によるカウンセリング」(約16.3%)を最も多く挙げていた。

表11 障害分類と授業以外の支援の関連(構成比)

区分 視覚障害 聴覚障害 言語障害 肢体不自由 内部障害 発達障害 精神障害 その他の障害
2_1_居場所の確保 11.1
2_2_通学支援 5.9
2_3_個別支援情報の収集
2_4_情報取得支援 2.0 2.4
2_5_自己管理指導 16.3 2.4
2_6_対人関係配慮
2_7_日常生活支援 20.0 2.0
2_8_専門家によるカウンセリング 1.4 16.3 4.8
2_9_医療機関との連携
2_10_医療機器、薬剤の保管等
2_11_休憩室・治療室の確保等 9.5
2_12_生活介助 40.0 9.8 9.5
2_13_介助者の入構、入室許可
2_14_キャリア教育
2_15_障害学生向け求人情報の提供 2.0
2_16_就職支援情報の提供、支援機関の紹介 3.8 3.9 4.1
2_17_インターンシップ先の開拓
2_18_就職先の開拓、就職活動支援
2_19_その他 1.4 2.0 4.8 2.0 2.4 11.1
2_20_バリアフリー対応 3.8 23.5 4.8
障害学生数 26 69 5 51 21 49 42 9

表10ならびに表11の結果から考えられる考察として、肢体不自由のある学生において、大学構内の物理的な環境整備が十分でないと学生生活上で支障が出る等の理由により、バリアフリー化が多く挙げられていると考えられた。また、発達障害のある学生では同時並行処理の困難や優先順位づけなど実行機能の障害等により、自己管理指導を受ける傾向があり、また、学生相談室等のカウンセリングの形態として行われやすい可能性が考えられた。

2.支援場面

(1)学生の申し出た/提供された支援の場面

ア)支援の場面の内訳

学生の申し出た/提供された支援の内訳を表12に示す。1人の学生が複数の支援場面について回答することができたため、支援場面は件数として示す。
表12より、支援の場面として、最も多く挙げられたものは「授業(講義形式)」(271件:約73.1%)であり、次いで、「授業(演習・実験・実習・フィールドワーク形式)」(231件:約62.3%)、「受験・入学」(117件:約31.5%)であった。

表12 学生の申し出た/提供された支援の場面

区分 件数(件) 構成比(%)
受験・入学 117 31.5
授業(講義形式) 271 73.1
授業(演習・実験・実習・フィールドワーク形式) 231 62.3
研究指導 65 17.5
事務手続き 39 10.5
施設やサービス(学生寮、図書館等)の利用 44 11.9
正課外の活動、行事、説明会、シンポジウム等への参加 74 20.0
キャリア教育、就職活動 56 15.1
その他 38 10.2
371

イ)授業支援と場面の関連

授業支援と場面の関連(構成比)を表13に示す。ここでは、10件を超える支援内容であり、かつ、「授業(講義形式)」よりも構成比が大きいものを特筆して記述する。
表13より、「1_6_手話通訳」では、「授業(演習・実験・実習・フィールドワーク形式)」(約78.6%)、「受験・入学」(約64.3%)、「正課外の活動、行事、説明会、シンポジウム等への参加」(約57.1%)において「授業(講義形式)」(約42.9%)よりも構成比が大きかった。「1_25_授業内容の代替、提出期限延長等」では、「授業(演習・実験・実習・フィールドワーク形式)」(約95.0%)において「授業(講義形式)」(約75.0%)よりも構成比が大きかった。

表13 学生の申し出た/提供された授業支援と場面の関連(構成比)

区分 受験・入学 授業(講義) 授業(実習等) 研究指導 事務手続き 施設・サービス 正課外の活動 キャリア教育 その他 計(件数)
1_1_点訳・墨訳等 100 100 100 100 100 100 100 100 1
1_2_教材のテキストデータ化 41.7 100 58.3 41.7 50 33.3 33.3 41.7 8.3 12
1_3_教材の拡大 27.3 90.9 45.5 9.1 18.2 9.1 18.2 27.3 9.1 11
1_4_ガイドヘルプ・移動支援 18.2 72.7 45.5 18.2 18.2 45.5 18.2 9.1 9.1 11
1_5_リーディングサービス 100 100 100 100 1
1_6_手話通訳 64.3 42.9 78.6 42.9 14.3 21.4 57.1 28.6 7.1 14
1_7_ノートテイク等 42.4 81.8 60.6 27.3 12.1 15.2 18.2 21.2 6.1 33
1_8_パソコンテイク 58.8 91.2 67.7 11.8 5.9 8.8 41.2 29.4 2.9 34
1_9_ビデオ教材字幕付け 20 100 40 20 5
1_10_チューター又はティーチングアシスタントの活用 25 50 50 50 4
1_11_試験時間延長・別室受験 70 43.3 26.7 3.3 3.3 13.3 10 30 30
1_12_解答方法配慮 66.7 66.7 33.3 16.7 6
1_13_パソコン等の持込使用許可 60 90 70 20 10 10 40 30 20 10
1_14_試験時注意事項等文書伝達 100 50 50 50 50 2
1_15_使用教室配慮 100 20 20 20 5
1_16_学内実技・実験等配慮 30 50 100 10 10 10 20 10 10
1_17_教室内座席配慮 56 96 48 8 8 16 8 4 25
1_18_FM補聴器・マイク使用 50 94.4 83.3 27.8 5.6 5.6 44.4 38.9 18
1_19_専用机・イス・スペース確保 33.3 100 66.7 22.2 11.1 11.1 11.1 11.1 22.2 9
1_20_読み上げソフト・音声認識ソフト使用 23.5 88.2 82.4 23.5 5.9 11.8 23.5 11.8 5.9 17
1_21_講義に関する配慮 7.7 84.6 53.9 15.4 15.4 13
1_22_障害・配慮事項の伝達 6.9 79.3 79.3 17.2 10.3 3.4 10.3 17.2 29
1_23_出席に関する配慮 95.8 87.5 16.7 4.2 4.2 4.2 4.2 24
1_24_学習指導 100 100 2
1_25_授業内容の代替、提出期限延長等 10 75 95 15 10 5 5 20
1_26_履修支援 20 60 80 20 20 5
1_27_学外実習・フィールドワーク配慮 12.5 100 25 8
1_28_その他 60 80 80 20 5
1_29_耳栓・イヤホン等の使用 14.3 100 57.1 14.3 14.3 28.6 42.6 14.3 7
1_30_コミュニケーション上の配慮 11.1 22.2 77.8 77.8 11.1 11.1 9
1_31_その他支援技術・補助具の使用 57.1 42.9 42.9 14.3 28.6 7
1_32_資料データの提供 30 100 70 40 40 20 20 20 10
1_33_口頭説明の視覚化 16.7 83.3 83.3 16.7 33.3 16.7 16.7 16.7 16.7 6
1_34_制度の変更 66.7 100 66.7 33.3 33.3 3
1_35_代筆 100 100 100 50 2
1_36_離席・入退室許可 25 75 100 25 25 4
1_37_水分・栄養剤等の摂取許可 80 100 80 20 20 20 20 20 5

表12ならびに表13の結果から考えられる考察として、手話通訳は講義よりも、リアルタイム制が求められる演習・実習や受験時の面接でニーズが表面化しやすい、あるいは、講義ではノートテイクやパソコンテイクが一般的な支援と認識されてしまい、手話通訳のニーズが潜在化している可能性が考えられた。また、演習・実習ではプレゼンテーション等を求められる機会が多く、課題の提出頻度も頻回であるため、講義と比べて授業内容の代替や課題の提出期限延長等のニーズが表面化しやすい可能性が考えられた。

ウ)授業以外の支援と場面の関連

授業以外の支援と場面の関連(構成比)を表14に示す。授業以外の支援は全件数が少ないため、5件を超える支援内容を特筆して記述する。
表14より、「2_5_自己管理指導」(約87.5%)および「2_8_専門家によるカウンセリング」(約66.7%)が「授業(演習・実験・実習・フィールドワーク形式)」で最も構成比が大きかった。また、「2_12_生活介助」では「受験・入学」ならびに「施設やサービスの利用」(約66.7%)で最も構成比が大きかった。
表14の結果から考えられる考察として、演習・実習等の授業では講義形式の授業と比べて予定が不規則になり、学生の不安等が高まるため、自己管理指導や専門家によるカウンセリングが行われやすい可能性が考えられた。また、肢体不自由のある学生で受験・入学時の施設やサービス利用に向けて、バリアフリー化が支援内容として挙げられていると考えられた。

表14 学生の申し出た/提供された授業以外の支援と場面の関連(構成比)

区分 受験・入学 授業(講義) 授業(実習等) 研究指導 事務手続き 施設・サービス 正課外の活動 キャリア教育 その他 計(件数)
2_1_居場所の確保 100 100 1
2_2_通学支援 33.3 66.7 33.3 66.7 66.7 33.3 3
2_3_個別支援情報の収集 0
2_4_情報取得支援 100 100 100 100 1
2_5_自己管理指導 25 50 87.5 25 37.5 12.5 25 12.5 25 8
2_6_対人関係配慮 0
2_7_日常生活支援 100 100 100 100 100 100 100 100 1
2_8_専門家によるカウンセリング 55.6 66.7 22.2 44.4 11.1 22.2 33.3 22.2 9
2_9_医療機関との連携 0
2_10_医療機器、薬剤の保管等 0
2_11_休憩室・治療室の確保等 50 50 2
2_12_生活介助 66.7 50 50 33.3 33.3 66.7 33.3 16.7 6
2_13_介助者の入構、入室許可 0
2_14_キャリア教育 0
2_15_障害学生向け求人情報の提供 100 1
2_16_就職支援情報の提供、支援機関の紹介 25 100 4
2_17_インターンシップ先の開拓 0
2_18_就職先の開拓、就職活動支援 0
2_19_その他 50 50 25 50 25 50 25 4
2_20_バリアフリー対応 33.3 16.7 8.3 41.7 16.7 50 12

3.大学と学生間の合意形成過程

(1)合意形成過程の全体的傾向

大学と学生間の合意形成過程の内訳(全体的傾向)を表15に示す。合意形成過程は質問項目「9:合意形成過程」の回答内容を示す。
表15より、合意形成で最も多く見られたパターンは「A:申し出通りの支援が提供された」(315件:約84.9%)であった。次いで、「C:申し出てはいないが支援が提供された」(39件:約10.5%)、「B:申し出とは異なる支援が提供された」(10件:約2.7%)、「D:申し出たものの支援は提供されなかった」(7件:約1.9%)であった。
表15の結果から考えられる考察として、回答者バイアスが影響している可能性があるものの、本研究の調査に回答した学生においては、申し出通りに支援が提供されている場合が多く、大学と学生間で合意形成がなされている可能性が考えられた。

表15 大学と学生間の合意形成過程(全体的傾向)

区分 件数(件) 構成比(%)
A:申し出通りの支援が提供された 315 84.9
B:申し出とは異なる支援が提供された 10 2.7
C:申し出てはいないが支援が提供された 39 10.5
D:申し出たものの支援は提供されなかった 7 1.9
371

(2)申し出内容と実際の支援内容に相違がある過程の詳細

ア)申し出とは異なる支援が提供された例

「B:申し出とは異なる支援が提供された例」の過程の傾向を以下に示す。

  • 研究資料のテキストデータ化を申し出たが、内容が不十分であり、提供に時間がかかったこと(No.23)
  • 可能な限り全ての音声情報の視覚化を申し出たが、要約筆記によるノートテイク等で提供されたこと(No.1)
  • 手話通訳を申し出たが、ノートテイクの提供となったこと(No.200)
  • 資料提供を申し出たが、授業内容が多岐にわたるため、友人のノートを借りるように返答されたこと(No.18)
  • トイレ介助を申し出たが、大学の職員を定期的な介助者として配置することが難しいため、善意での介助として行われたこと(No.86)
  • 授業時間中の水分摂取許可を申し出たが、教員によって対応が異なるため、他の生徒に許可していないことを理由として認められなかったこと(No.15)
  • 拡大資料の提供を申し出たが、教員によって対応が異なるため、提供方法がバラバラであったこと(No.139)
  • 単位取得基準の緩和を申し出たが、内容が漠然としていることや各授業での調整に時間がかかるため、途中退室や課題変更の対応となったこと(No.162)
  • 配慮事項の伝達に教職員が仲介することを申し出たかったが、言うのが面倒くさくてずっと言えなかったため、出欠席の配慮等の交渉を自分1人で行われなければならなかったこと(No.156)

上記の結果より考えられる考察として、テキストデータ化や手話通訳、トイレ介助など一定の質保障が求められる支援内容において、大学の体制により実際に提供される支援が学生のニーズを十分に満たせない場合があると考えられた。学内外のリソース確保や支援提供体制における継続的な質の向上を目指す取り組みが必要である。また、障害学生支援部署があっても、最終的な配慮内容の調整や提供が各授業担当教員に依存するために一定の質で支援が提供されない場合があると考えられた。この点は合理的配慮を提供する大学側の体制上の課題であり、授業間での対応の差を減らすための組織的な工夫が必要である。その他、学生から申し出のある支援内容が漠然としている場合や、学生が申し出をするための心身状態ではない場合などに学生が期待する支援が提供されないことがあると考えられた。発達・精神障害等のある学生においては、支援申し出のプロセス自体が社会的障壁になる場合も考えられ、教職員側から学生に働きかけて、学生の潜在的な支援ニーズを具体化するような姿勢も求められるだろう。

イ)申し出てはいないが支援が提供された例

「C:申し出てはいないが支援が提供された例」の過程の傾向を以下に示す。

  • 申し出てはいないが、入学時に拡大資料の必要性を尋ねられた(No.67)
  • 申し出てはいないが、自宅で使用している音声パソコンを大学でも導入してもらった(No.229)
  • 申し出てはいないが、入学時にパソコンテイクの説明を受けた(No.183)
  • 申し出てはいないが、拡大資料が提供された(No.283)
  • 申し出てはいないが、もともとマイクを使用する形式の授業などで、授業中のマイク使用が行われた(No.26,66)
  • 申し出てはいないが、グループやクラス編成が調整された(No.66,149)
  • 申し出てはいないが、バリアフリー対応がなされた(No.41,208)
  • 申し出てはいないが、書字がやや遅いため、試験時間延長と別室受験が提供された(No.44)
  • 申し出てはいないが、災害時の避難誘導の手順について話し合いを行った(No.47)
  • 申し出てはいないが、企業の情報や就職支援情報が提供された(No.52,300)
  • 申し出てはいないが、教職員から見た病状により、カウンセリングを勧められ、出席等の配慮が提供された(No.140)
  • 申し出てはいないが、実習開始前の配慮事項説明や実習中の担当変更、実習記録の自己管理指導が行われた(No.177)

上記の結果より考えられる考察として、「申し出てはいないが支援が提供される例」では事前に何らかの診断や傾向のある学生であることを知っており、必要と考えられる支援内容を教職員が提案する過程が全体的に多く見られていることが分かる。大学の教職員側から学生の潜在的なニーズを積極的に把握して支援を提案していることは、学生自身が把握していない支援の選択肢を知る機会にもなり、合意形成過程の好事例として考えられる。また、実習中の支援については、学生自身も実習の様子が十分にイメージできていない可能性が高いと予想され、実習で課題となるポイントを把握している教職員側からの働きかけは重要であるだろう。その他、大学に至るまでの学生自身の生活経験が大学における支援でも参考になる場合があり、学生を取り巻く他の環境に関する情報収集も有効であると考えられる。
他方で、必ずしも提供された支援が学生の意向に沿わない場合もあると考えられ、学生からの申し出がない時に支援の選択肢を教職員側から提案した場合も、その合意形成過程では学生の意思確認を行って決定されることが肝要である。特に障害に関する情報は要配慮個人情報でもあるため、学生の情報の取り扱いや伝達については学生に対する十分な説明が必要であるだろう。

ウ)申し出たものの支援は提供されなかった例

「D:申し出たものの支援は提供されなかった例」の過程の傾向を以下に示す。

  • 試験時間延長・別室受験を申し出たが、通常の時間割と異なり個別対応が難しいため、提供されなかった(No.292)
  • 数学の授業で文字起こしを申し出たが、数字や数式は文字起こしが完璧にできないかもしれないと言われ、提供されなかった(No.29)
  • 手話通訳を申し出たが、提供されなかった(No.58)
  • 後で復習するためにビデオ撮影を申し出たが、許可できないとして、提供されなかった。
  • 研究室でチャットアプリでのコミュニケーションや周りの人との間に衝立を設置することを申し出たが、指導教員からは「しょうがない」と言われ、一部(チャットアプリ)は提供されなかった。
  • ビデオ教材字幕付け・文字起こしを申し出たが、リソース不足のため、提供されなかった。
  • 実験配慮を申し出たが、提供されなかった。

上記の結果より考えられる考察として、手話通訳やビデオ教材字幕付、専門的な文字起こしなど一定の質保障が求められる支援内容において、支援が提供されない場合があった。「B:申し出とは異なる支援が提供された例」で述べたことと同様であるが、学内外のリソース確保や支援提供体制における継続的な質の向上を目指す取り組みが必要である。また、試験時間延長・別室受験については受験・入学時には認められても、通常の授業時間割では実施が困難であるといった合意形成過程の違いが表れていると考えられる。あくまでも試験受験の公平性を担保するという意味では授業の試験も同様と考えられるが、大学によっては開始・終了時刻の調整や元の試験時間の短縮などの工夫を行う場合もあり、実現可能な方法の検討は必要と考えられる。
これらの支援の不提供に関しては、支援提供が過重な負担に当たるのか否かによって主に検討されるが、他方で、大学からの十分な説明が得られていないまま不提供になっている可能性も考えられる。本研究では学生からのWEB調査システムによる回答のため、未記載により大学からの説明がなかったと判断することは困難であるが、不提供の場合には相応の理由の説明と、代替案の提示など社会的障壁を除去するための不断の建設的対話が重要である。

注意:下記の表については情報量が多いため、HTML上では割愛しております。PDF版をご確認ください。

  • 表16 大学と学生間の合意形成過程(B:申し出とは異なる支援が提供された例)
  • 表17 大学と学生間の合意形成過程(C:申し出てはいないが支援が提供された例)
  • 表18 大学と学生間の合意形成過程(D:申し出たものの支援は提供されなかった例)