研究協力者の属性

1.研究協力の状況

(1)学校単位での研究協力の状況

本調査の学校単位での研究協力の状況を表2に示す。依頼校数は調査協力依頼を送付した学校数を示す。全依頼返送校数は調査協力の可否について回答した学校数を示す。対象校数は返送校数のうち、対象学生(大学等に在籍し、合理的配慮を受けている障害学生)の在籍がない学校を減算した学校数を示す。協力校数は対象校のうち調査協力可と回答した学校数を示す。協力率は協力校数を対象校数で除算して100を乗ずることで算出した。構成比は協力校数を全学校数(大学の内訳においては大学数)で除算して100を乗ずることで算出した。
表2より、調査協力の可否について回答した大学等のうち、約42.2%(127校)が本調査研究に協力した(令和元年度調査では約37.8%、152校)。構成比から本調査研究に協力した学校としては『大学』(105校:約82.7%)が最も多く、内訳としては『私立大学』(61校:約58.1%)が最も多かった。
表2の結果から令和元年度調査と比べて協力した大学数が減少しているが、その理由として本調査では合理的配慮を受けている障害学生に対象を限定したために、合理的配慮以外の支援を受ける障害学生しか在籍していない大学が対象から除外されたことが可能性として考えられた。

表2 学校単位での研究協力の状況
区分 依頼校数(校) 返送校数(校) 対象校数(校) 協力校数(校) 協力率(%) 構成比(%)
国立大学 86 44 42 30 71.4 28.6
公立大学 94 31 25 14 56.0 13.3
私立大学 621 202 151 61 40.4 58.1
小計 801 277 218 105 48.2 82.7
短期大学 321 114 60 18 30.0 14.2
高等専門学校 57 26 23 4 17.4 3.1
1179 417 301 127 42.2 100.0

【留意点】
ア)本調査は悉皆調査ではなく、本調査協力は各学校の任意で行われた。
イ)各大学への調査協力依頼は2020年12月〜2021年1月にかけて行われた。
ウ)鍵括弧内は大学における設置形態別の内訳を示す。
エ)協力校数は調査協力可と回答した学校数であり,必ずしも当該学校の学生が調査協力に同意したことを意味するものではない。

(2)学生単位での研究協力の状況

本調査の学生単位での研究協力の状況を表3に示す。対象者数は調査協力可と回答した学校の担当者により、申告された人数を示す。回答者数はWEB調査システムに回答のあった数を示す。回答率は回答者数を対象者数で除算して100を乗ずることで計算した。構成比は各回答者数を全回答者数(大学の内訳においては大学における全回答者数)で除算して100を乗ずることで算出した。
表3より、調査協力可とした学校における対象者数のうち、約17.0%(431人)から回答を得た(令和元年度調査では約8.5%、243人)。構成比から本調査研究に協力した学生の学校種別としては『大学』(361人:約83.7%)が最も多く、内訳としては『私立大学』(220人:約60.9%)が最も多かった。
表3の結果から令和元年度調査と比べて学生の回答率は2倍以上に増加しており、本調査では紙媒体調査からWEB調査に変更したこと、また、回答した学生のうち希望する者に謝礼を提供したことで回答率の増加に寄与したと考えられた。以降は、回答者を対象となる障害学生とみなして分析し、特段の記載がない限りは大学、短期大学、高等専門学校を全て統合して結果を分析した。

表3 学生単位での研究協力の状況
区分 対象者数(人) 回答者数(人) 回答率(%) 構成比(%)
国立大学 881 126 14.3 34.9
公立大学 97 15 15.5 4.2
私立大学 1311 220 16.8 60.9
小計 2289 361 15.8 83.7
短期大学 222 27 12.2 6.3
高等専門学校 22 3 13.6 0.7
不明/未回答 40 9.3
合計 2533 431 17.0 100.0

【留意点】
ア)対象者数は各学校からの概数による申告に基づくものであり、対象学生の正確な数を示すものではない。
イ)対象学生への調査協力依頼は2021年1月〜2月に行われた。
ウ)鍵括弧内は大学における設置形態別の内訳を示す。
エ)回答者数は各学校に付した所属コードをもとに学校種別で集計している。所属コードの記載がない回答者については「不明」に記載している。

2.データの取り扱い

本調査により得られた学生からの回答に対する信頼性を担保するために、下記の手順でデータの抽出・前処理を行った。

(1)データの抽出基準

下記の条件に該当するデータを抽出した。
ア)WEB調査システムを完了していること
イ)「6:障害名」または「7:障害分類」に回答があること
ウ)配慮内容が質問項目から読み取れること、またはオンライン授業における修学支援に関する質問に回答が見られること

(2)データの前処理

下記の条件に該当するデータを抽出した。
ア)障害科学を専門とする学生である研究補助者2名がWEB調査システムの生データのうち、上記の「データの抽出基準」に該当するデータを抽出し、明らかな誤字脱字等を修正した。
イ)研究補助者2名が文部科学省令和元年度学校基本調査学校系統分類表に基づき、学科系統のコーディングを行った。また、(3)(4)に示す通り、障害分類と配慮内容についてもコーディングを行った。
ウ)研究補助者が行ったア)イ)の前処理結果に対して、障害学生支援部署の教員である研究代表者と共同研究者1名の計2名がダブルチェックを行い、コーディングに相違のある箇所を照合した。相違のある箇所については3名で協議をして、適当と判断される結果を採用した。

(3)障害分類のコーディングルール

障害分類の信頼性を担保するため、「6:障害名」の自由記述と「7:障害分類」のチェック内容を照合して、障害分類のコーディングルールを下記の通りとした。
ア)“診断あり”の回答については、原則的に、(a)「6:障害名」の記載内容と「7:障害分類」が完全に対応していること、(b)「8:根拠資料」で『医師の診断書』または『障害者手帳の種別・等級・区分認定』がチェックされていること、の2つを基準とし、必要に応じて、「7:障害分類」を修正した。“診断なし+傾向あり”の回答については、明らかな誤入力を除いて、原則的に学生が「7:障害分類」にチェックした内容をそのまま使用した。
イ)「7:障害分類」が未回答の場合や「6:障害名」と分類が整合しないと考えられた場合には、「6:障害名」の自由記述に即して、JASSO実態調査の診断名検索機能等を利用して入力した。
ウ)「7:障害分類」のうち、『肢体不自由(上肢機能障害)』と『肢体不自由(下肢機能障害)』の両方に回答がある場合には、「6:障害名」の自由記述を確認した上で、「7:障害分類」は『肢体不自由(上下肢機能障害)』とした。
エ)「7:障害分類」のうち、『視覚障害(盲)』と『視覚障害(弱視)』あるいは『聴覚障害(聾)』と『聴覚障害(難聴)』の両方に“診断あり”と回答がある場合には、『視覚障害(盲)』あるいは『聴覚障害(聾)』のみ“診断あり”とした。
オ)「7:障害分類」のうち、『視覚障害(盲)』と『視覚障害(弱視)』あるいは『聴覚障害(聾)』と『聴覚障害(難聴)』の一方に“診断あり”、他方に“診断なし+傾向あり”と回答がある場合には、“診断あり”のみを残した。
カ)「7:障害分類」のうち、『視覚障害(盲)』と『視覚障害(弱視)』あるいは『聴覚障害(聾)』と『聴覚障害(難聴)』の両方に“診断なし+傾向あり”と回答がある場合には、「8:根拠資料」を確認して、医師の診断書や障害者手帳がない場合には、そのまま残した。
キ)以降の分析では、特段の記載がある場合を除いて、“診断あり”のみのデータを示した。

(4)配慮内容のコーディング

令和元年度に実施した調査項目を参考に、下記の通り、コーディングを行った。なお、令和元年度調査とは異なり、本調査では合理的配慮の提供に限定したこと、また、オンライン授業に関係する合理的配慮が加えられたことから、項目が変更されている。
ア)「12:申請した配慮内容」については、学生によって「13:実際に提供された配慮内容」、「14:満足している配慮内容」、「16:満足していない配慮内容」、「29:オンライン授業で新たに必要とした配慮内容」にも申請した配慮内容が混在して回答されていることが確認された。そのため、これら5つの質問項目の記載内容を全て統合して、質問項目「12」を「申請した/提供された配慮内容」としてコーディングを行った。
イ)その他の質問項目「13」、「14」、「16」、「29」については各項目の記載内容に基づきコーディングを行った。

  • 1.点訳・墨訳:点訳は教材、配布資料などを点字に訳すこと。墨訳は試験の点字解答を出題者が採点する際等、点字を墨字、活字に訳すこと。触地図を含む。
  • 2.教材のテキストデータ化:教材、配布資料等をテキストデータにすること。テキストデータ以外の資料提供は『31.資料データ・紙媒体資料の提供』に含む。
  • 3.教材の拡大:教材、配布資料等を拡大読書器でモニターに拡大表示したり、大きな文字で印刷したりすること。
  • 4.移動・操作の補助:移動の際に、歩行介助及び誘導を行うこと。主として講義と講義の間の教室移動のサポートをすること。歩行訓練などガイドヘルプ以外の移動支援、物理的な操作の補助を含む。
  • 5.リーディングサービス:教材や配布資料などを音声で読み上げる(文字を音声に訳す)こと。講義中に板書されたものをその場で口頭により伝える「代読」、利用者と支援者が対面して資料等を読み上げる「対面朗読」、図表や資料の読み上げを含む。
  • 6.手話通訳:講義内容や周りの様子等を手話で伝えること。盲聾者のための触手話を含む。
  • 7.ノートテイク:講義内容や周りの様子等を筆記し、文字で伝えること。筆談を含む。支援内容が「情報保障」のみの場合には、『8.パソコンテイク』に分類した。
  • 8.パソコンテイク:講義内容や周りの様子等をパソコンに入力し、文字で伝えること。タブレットでのテイクも含む。支援内容が「情報保障」のみの場合を含む。
  • 9.ビデオ教材字幕付け・文字起こし:教材等として使用される映像メディアのセリフやナレーションをテキスト化し、字幕として挿入する、または文字起こしして記すこと。
  • 10.チューター又はティーチングアシスタントの活用:大学院の学生や担当教員等が学部学生等に対し、生活や講義、実験・実習、演習等の補助や助言等を行う学内制度を活用した支援のこと。
  • 11.試験時間延長・別室受験:定期試験の際に、通常の試験時間を延長する、他の学生とは別室で試験を実施すること。
  • 12.解答方法配慮:試験の解答方法やレポートの作成方法を変更すること。
  • 13.パソコン等の持込使用許可:受講に利用するため、パソコンの持ち込みを許可すること。タブレット端末やスマートフォン端末を含む。
  • 14.試験時注意事項等文書伝達:定期試験の際、通常は口頭で受験者に伝達する注意事項を文書にして配布あるいは板書すること。
  • 15.使用教室配慮:授業で使用する教室を、移動しやすい教室や修学に適した広さ・設備のある教室にすること。座席以外の教室内の環境変更や教室の場所の変更も含む。
  • 16.学内実技・実験等配慮:学内において、いわゆる座学中心の講義以外の授業(体育等の実技、専門教育での実習、学外実習等)において配慮すること。
  • 17.教室内座席配慮:教室内での座席を障害学生が受講しやすい位置に配慮すること。
  • 18.補聴援助システムの使用:講義者の声を、専用のマイク等を通じて補聴器を装着した学生に伝える支援技術の活用。またはその器材の貸し出し等を行うこと。
  • 19.専用机・イス・スペース確保:車いす用の机の配置やスペースの確保等、受講や学生生活を円滑にするために、障害の状況や特性に合わせた設備またはそれに関連する配慮を行うこと。
  • 20.読み上げソフト・音声認識ソフトの使用:電子データを音声に変換して読み上げる、音声データを電子データに変換するソフトを活用する、またはその貸し出し等を行うこと。
  • 21.講義内容の記録許可:講義内容の録音、板書の撮影等を許可すること。
  • 22.障害・配慮事項の伝達:配慮依頼文書の配布や、口頭や文書により障害を有することを伝達すること。障害の内容は伝達するが具体的な配慮内容が不明であるもの、理解を求める記述のみに留まるものを含む。
  • 23.出席に関する配慮:講義等の出欠席について配慮すること。遅刻に関しては『35.離席・入退室許可』に含む。
  • 24.学習指導:授業の補習や補講、レポート作成補助、定期試験のための学習を行うこと。授業外で授業内容に関する質問に応じることも含む。
  • 25.授業内容・評価方法の変更・代替:授業内容や評価方法等を変更・代替することや、課題の提出期限を延長すること。
  • 26.履修登録支援:履修登録の補助を行うことや、優先的な履修登録を行うこと。
  • 27.学外実習・フィールドワーク配慮:学外において、実習先での情報保障や移動支援、実習先機関との連携等を行うこと。
  • 28.耳栓・イヤホン等の使用:耳栓やノイズキャンセリングイヤホン等の使用を許可すること。
  • 29.コミュニケーション上の配慮:授業中の指名を避けることや、授業中のグループワーク等において発話等に関するルールを変更・調整すること。
  • 30.その他の支援技術・補助具の使用:クッションや視覚補助具など、支援技術・補助具の使用を許可すること。『18.補聴援助システム』、『20.音声読み上げソフト・音声認識ソフト使用』、『28.耳栓・イヤホン等の使用』に該当しない支援技術・補助具を含む。
  • 31.資料データ・紙媒体資料の提供:テキストデータ化以外の資料を提供すること。資料のPDF化や紙媒体での配布を含む。
  • 32.口頭説明の視覚化:授業中の口頭指示による説明をレジュメに印字する、板書する等の口頭説明の視覚化を行うこと。
  • 33.制度の変更:長期履修制度など一般的な学籍制度とは異なる制度等を利用すること。
  • 34.代筆:文書等の代筆を行うこと。
  • 35.離席・入退室許可:授業中の離席や授業開始・終了時刻とは異なる入退室を許可すること。
  • 36.水分・栄養剤等の摂取許可:授業・試験中の水分や栄養剤等の摂取を許可すること。
  • 37.オンデマンド動画・資料の期限の柔軟な設定:オンデマンド動画の視聴や資料のダウンロード期限等を通常よりも柔軟に設定すること。
  • 38.授業情報の予告・リマインド:授業の実施方法、内容、評価方法などの情報を明示すること。予定変更に関する連絡や情報を障害学生のみに個別伝達すること、情報を複数回伝達するリマインド、課題内容の明確化を含む。
  • 39.チャット等の使用許可:オンライン授業において、チャット等を使用したコミュニケーションを許可すること。
  • 40.カメラやマイクのオフ:オンラインのリアルタイム(同時双方向型)授業中にカメラやマイクのオフを許可すること。
  • 41.話者の口型情報の利用:読話等のために、マスクを外して口元など話している人の顔を見せること。フェイスシールドの着用を含む。
  • 42.施設設備の整備:新たに施設設備を整備すること。休憩室の確保やスロープの設置等を含む。
  • 43.施設設備の柔軟な運用:既存の施設設備の運用ルール等を障害の状況に応じて柔軟に変更すること。エレベーターの優先乗降や特別な通学方法(自家用車等)の許可も含む。
  • 44.オンラインによる参加・復習:対面授業をオンラインのリアルタイム(同時双方向型)授業で受講する、または、対面あるいはリアルタイム授業を録画したデータの視聴を認めること。
  • 45.教材のフォントや色の調整:教材、配布資料等のフォントを変更する、または、色の変更を加えること。ルビ振りを含む。
  • 46.その他:上記に該当しないもの。

3.学生の属性

(1)所属・学年別

学生の所属・学年を表4に示す。質問項目「3:所属」の回答内容に基づき、集計された。学年は質問項目「5:学年」の回答内容に基づき、集計された。構成比について、所属の場合は全障害学生のうちに占める割合を示し、学年の場合は当該所属に在籍する全障害学生のうちに占める割合を示す。また、R1 JASSO実態調査として、令和元年度のJASSO実態調査における結果を引用している。
表4より、回答学生で最も多い所属は『学部(通学課程)』(405人:約94.0%)であった。『学部(通学課程)』のうち、最も多い学年は『2年』(126人:約31.1%)であった。表4の結果は令和元年度の本研究の調査と同程度の構成比であった。また、令和元年度JASSO実態調査の結果と比べると、本調査では学部(通学課程)の割合がやや高く、学部(通信教育課程)の割合が低かった。その理由として、本調査では合理的配慮を受ける障害学生に限定しているため、可能性の1つとして通学課程の学部生の方が通信教育課程の学部生よりも合理的配慮の提供割合が高い可能性が考えられた。

表4 学生の所属・学年
区分 本調査 障害学生数(人) 本調査 構成比(%) R1 JASSO実態調査 障害学生数(人)  R1 JASSO実態調査 構成比(%)
学部(通学課程) 405 94.0 33506 89.0
うち1年生 95 23.5
うち2年生 126 31.1
うち3年生 98 24.2
うち4年生 76 18.8
うち5年生以上 7 1.7
うち不明・未回答 3 0.7
学部(通信教育課程) 1 0.2 2014 5.3
大学院(通学課程) 23 5.3 1979 5.3
大学院(通信教育課程) 0 26 0.1
専攻科 0 122 0.3
不明/未回答 2 0.5
431 100.0 37647 100.0

【留意点】
ア)結果は大学、短期大学、高等専門学校の所属学生を全て統合している。
イ)鍵括弧内は学部(通学課程)における学年の内訳を示す。
ウ)学年は回答した学生の自己申告に基づくものであり、実際の年次進行と異なる場合もある。

(2)学科・専攻別

学生の所属学科・専攻を表5に示す。質問項目「4:所属名」の回答内容に基づき、文部科学省令和元年度学校基本調査学科系統分類表の大分類により分類した。構成比については全障害学生のうちに占める割合を示す。
表5より、最も多い学科・専攻は『社会科学』(115人:約26.0%)であり、次いで『人文科学』(112人:約26.0%)であった。表5の結果は令和元年度の本研究の調査と比べると人文科学および社会科学の割合がやや高く、保健の割合がやや低い傾向にあった。また、令和元年度JASSO実態調査の結果と比べると、本調査では人文科学および社会科学の割合がやや高く、工学および保健の割合がやや低い傾向にあった。

表5 学生の所属学科・専攻
区分 本調査 障害学生数(人) 本調査 構成比(%) R1 JASSO実態調査 障害学生数(人) R1 JASSO実態調査 構成比(%)
人文科学 112 26.0 6893 20.5
社会科学 115 26.7 7486 22.2
理学 26 6.0 1409 4.2
工学 48 11.2 5078 15.1
農学 6 1.4 1171 3.5
保健 29 6.7 3847 11.4
商船 0 16 0.0
家政 10 2.3 756 2.2
教育 41 9.5 2396 7.1
芸術 10 2.3 2049 6.1
その他 31 7.2 2582 7.7
不明/未回答 3 0.7
合計 431 100.0 33683 100.0

【留意点】
ア)結果は大学、短期大学、高等専門学校の所属学生を全て統合している。

(3)障害分類

学生の障害分類を表6に示す。障害分類は「6:障害名」および「7:障害分類」の回答内容に基づくコーディング作業の結果により集計された。構成比は、全障害学生のうちに占める割合(各障害分類の内訳の場合は当該障害分類の全障害学生数のうちに占める割合)を示す。
表6より、最も多い障害(診断あり)は『発達障害』(109人:約25.3%)および『精神障害』(109人:約25.3%)であり、次いで『聴覚障害』(79人:約18.3%)、『肢体不自由』(63人:約14.6%)、『慢性疾患・内部障害』(41人:約9.5%)、『その他の障害』(32人:約7.4%)、『診断無+傾向有』(30人:約7.0%)、『視覚障害』(20人:約4.6%)、『言語障害』(5人:約1.2%)であった。『診断無+傾向有』の内訳としては、医学的診断はないが何らかの発達障害の傾向有とする学生が多く含まれた。『その他の障害』の内訳としては、起立性調節障害、過敏性腸症候群、聴覚情報処理障害(APD)、色覚異常、手掌多汗症などが含まれた。
表6の結果は令和元年度の本研究の調査と比べると各障害分類による構成比は大きく変動している。また、令和元年度JASSO実態調査の結果と比べると、聴覚障害や肢体不自由、発達障害の割合が高く、慢性疾患・内部障害の割合が低い傾向にある。本調査では合理的配慮を受けている障害学生に調査対象を限定していたことから、令和元年度の本研究の調査ならびに令和元年度JASSO実態調査における授業以外の支援(カウンセリング、就職支援等)のみを受けている障害学生が対象に含まれない点で異なる。つまり、支援の中でも合理的配慮を受けているか、合理的配慮以外の支援を受けているかで学生の障害分類における構成比は異なってくると考えられ、特に慢性疾患・内部障害に関しては合理的配慮を受けている割合が実際の支援障害学生比率と比べても低い可能性が推察された。また、本調査では約7.0%の学生において障害に関する医学的診断がなくても何らかの障害の傾向により合理的配慮が提供されていることが確認された。

表6 学生の障害分類
区分 本調査 障害学生数(人) 本調査 構成比(%) R1 JASSO実態調査 障害学生(人) R1 JASSO実態調査 構成比(%)
視覚障害 20 4.6 887 2.4
うち盲 7 35.0 171 19.3
うち弱視 13 65.0 716 80.7
聴覚障害 79 18.3 1915 5.1
うち聾 55 69.6 512 26.7
うち難聴 24 30.4 1403 73.3
言語障害 5 1.2 65 0.2
肢体不自由 63 14.6 2391 6.4
うち上肢機能障害 6 9.5 329 13.7
うち下肢機能障害 17 27.0 860 36.0
上下肢機能障害 38 60.3 789 33.0
他の機能障害 13 20.6 413 17.3
慢性疾患・内部障害 41 9.5 12374 32.9
発達障害 109 25.3 7065 18.8
うち自閉スペクトラム症 79 72.5 3781 53.5
うち注意欠如・多動症 49 45.0 1883 26.7
うち限局性学習症 10 9.2 231 3.3
精神障害 109 25.3 9709 25.8
うち統合失調症等 8 7.3 842 8.7
気分障害 45 41.3 3105 32.0
神経症性障害 44 40.4 3883 40.0
摂食障害・睡眠障害等 10 9.2 921 9.5
他の精神障害 29 26.6 958 9.8
その他の障害 32 7.4 2736 7.3
診断無+傾向有 30 7.0
431 100.0 37647 100.0

【留意点】
ア)鍵括弧内は各障害分類における内訳を示す。
イ)小計は当該障害分類における内訳の人数計を示す。
ウ)各障害分類では重複する場合があり、また、JASSO実態調査の結果と本調査の結果で障害分類の手順や方法に違いがあるため、小計や合計は一致しないことがある。

学生の障害分類のうち、重複のある組み合わせと人数を表7に示す。
表7より、学生の障害分類のうち、最も重複する組み合わせは『発達障害(ASD:自閉スペクトラム症)』と『発達障害(ADHD:注意欠如・多動症)』のいずれか診断あり(33人)および『発達障害(ASD:自閉スペクトラム症)』と『精神障害(うつ病、双極性感情障害等の気分障害)』のいずれか診断あり(33人)であった。次いで、『発達障害(ASD:自閉スペクトラム症)』と『精神障害(不安障害、強迫性障害等の神経症性障害)』のいずれか診断あり(26人)および『発達障害(ADHD:注意欠如・多動症)』と『精神障害(うつ病、双極性感情障害等の気分障害)』のいずれか診断あり(26人)、『発達障害(ASD:自閉スペクトラム症)』と『発達障害(ADHD:注意欠如・多動症)』の両方診断あり(23人)であった。表7の結果から、学生の重複障害については、複数の発達障害あるいは発達障害と精神障害の重複が多く見られており、いずれかの診断は有するが、他方の診断は有しないなど学生が自認する障害としては医学的診断名以外にも多岐にわたることが推察される。

表7-1 学生の重複する障害分類(診断あり)
区分 障害学生数(人)
弱視と上下肢機能障害 1
弱視と慢性疾患・内部障害 2
弱視とその他の障害 1
聾と上肢機能障害 1
聾とASD 1
聾とADHD 1
聾とSLD 1
聾と神経症性障害 1
聾と他の精神障害 1
聾とその他の障害 2
難聴と上下肢機能障害 1
難聴と他の機能障害 1
難聴と慢性疾患・内部障害 1
難聴とその他の障害 2
言語障害とADHD 1
上肢機能障害とASD 1
上肢機能障害とADHD 1
上肢機能障害とSLD 1
上肢機能障害と他の精神障害 2
上肢機能障害とその他の障害 1
下肢機能障害と他の機能障害 2
下肢機能障害と慢性疾患・内部障害 4
上下肢機能障害と他の機能障害 7
上下肢機能障害と慢性疾患・内部障害 9
上下肢機能障害とSLD 1
上下肢機能障害と他の精神障害 1
上下肢機能障害とその他の障害 3
他の機能障害と慢性疾患・内部障害 3
他の機能障害と他の精神障害 1
他の機能障害とその他の障害 1
慢性疾患・内部障害とASD 1
慢性疾患・内部障害とADHD 1
慢性疾患・内部障害とその他の障害 4
ASDとADHD 23
ASDとSLD 5
ASDと統合失調症等 2
ASDと気分障害 6
ASDと神経症性障害 6
ASDと他の精神障害 5
ASDとその他の障害 1
ADHDとSLD 5
ADHDと統合失調症等 1
ADHDと気分障害 6
ADHDと神経症性障害 3
ADHDと他の精神障害 2
ADHDとその他の障害 2
SLDと神経症性障害 1
SLDと他の精神障害 2
統合失調症等と気分障害 1
気分障害と神経症性障害 10
気分障害と摂食障害・睡眠障害等 2
気分障害と他の精神障害 6
気分障害とその他の障害 1
神経症性障害と摂食障害・睡眠障害等 2
神経症性障害と他の精神障害 10
摂食障害・睡眠障害等と他の精神障害 2
摂食障害・睡眠障害等とその他の障害 1
表7-2 学生の重複する障害分類(診断なし+傾向あり)
区分 障害学生数(人)
難聴と弱視 1
言語障害と難聴 3
下肢機能障害と難聴 1
下肢機能障害と上肢機能障害 5
上下肢機能障害と弱視 1
上下肢機能障害と難聴 1
上下肢機能障害と言語障害 5
上下肢機能障害と下肢機能障害 3
他の機能障害と難聴 1
他の機能障害と言語障害 1
他の機能障害と下肢機能障害 1
他の機能障害と上下肢機能障害 3
慢性疾患・内部障害と弱視 1
慢性疾患・内部障害と難聴 1
慢性疾患・内部障害と言語障害 3
慢性疾患・内部障害と下肢機能障害 2
慢性疾患・内部障害と他の機能障害 1
ASDと弱視 4
ASDと聾 1
ASDと難聴 1
ASDと言語障害 1
ASDと上下肢機能障害 1
ASDと他の機能障害 2
ASDと慢性疾患・内部障害 4
ADHDと聾 2
ADHDと難聴 2
ADHDと言語障害 1
ADHDと他の機能障害 3
ADHDと慢性疾患・内部障害 2
ADHDとASD 33
SLDと聾 2
SLDと上下肢機能障害 1
SLDと他の機能障害 2
SLDと慢性疾患・内部障害 1
SLDとASD 13
SLDとADHD 11
統合失調症等と言語障害 1
統合失調症等とASD 9
統合失調症等とADHD 10
統合失調症等とSLD 1
気分障害と聾 1
気分障害と難聴 1
気分障害と言語障害 2
気分障害と下肢機能障害 1
気分障害と上下肢機能障害 1
気分障害と他の機能障害 1
気分障害と慢性疾患・内部障害 3
気分障害とASD 33
気分障害とADHD 26
気分障害とSLD 6
気分障害と統合失調症等 7
神経症性障害と言語障害 2
神経症性障害と下肢機能障害 1
神経症性障害と上下肢機能障害 3
神経症性障害と他の機能障害 1
神経症性障害と慢性疾患・内部障害 1
神経症性障害とASD 26
神経症性障害とADHD 15
神経症性障害とSLD 6
神経症性障害と統合失調症等 6
神経症性障害と気分障害 20
摂食障害・睡眠障害等と慢性疾患・内部障害 1
摂食障害・睡眠障害等とASD 16
摂食障害・睡眠障害等とADHD 18
摂食障害・睡眠障害等とSLD 2
摂食障害・睡眠障害等と統合失調症等 3
摂食障害・睡眠障害等と気分障害 18
摂食障害・睡眠障害等と神経症性障害 9
他の精神障害と弱視 1
他の精神障害と聾 1
他の精神障害と難聴 1
他の精神障害と言語障害 4
他の精神障害と上肢機能障害 1
他の精神障害と下肢機能障害 2
他の精神障害と上下肢機能障害 2
他の精神障害と他の機能障害 3
他の精神障害と慢性疾患・内部障害 2
他の精神障害とASD 11
他の精神障害とADHD 7
他の精神障害とSLD 3
他の精神障害と統合失調症等 3
他の精神障害と気分障害 10
他の精神障害と神経症性障害 12
他の精神障害と摂食障害・睡眠障害等 7
その他の障害と弱視 1
その他の障害と難聴 3
その他の障害と言語障害 1
その他の障害と下肢機能障害 1
その他の障害と他の機能障害 2
その他の障害と慢性疾患・内部障害 1
その他の障害とASD 4
その他の障害とADHD 4
その他の障害とSLD 2
その他の障害と統合失調症等 1
その他の障害と気分障害 2
その他の障害と摂食障害・睡眠障害等 2
その他の障害と他の精神障害 1

【留意点】
ア)最左列は障害名を簡略化して示す。
イ)表の右上部はいずれも診断ありの組み合わせを示す。表の左下部は一方で診断あり、他方で診断なし+傾向ありの組み合わせを示す。
ウ)3つ以上の障害が重複する学生は複数セルに反映されている。

(4)障害の根拠資料

学校に提出した障害の状況に関する根拠資料を表8に示す。質問項目「8:根拠資料」の回答内容に基づき、集計された。
表8より、最も多い根拠資料は『医師の診断書』(335人:約77.7%)であり、次いで『障害者手帳の種別・等級・区分認定』(189人:約43.9%)、『高等学校・特別支援学校等での支援状況に関する資料』(82人:約19.0%)であった。また、障害分類別に見ると視覚障害、聴覚障害、肢体不自由においては『障害者手帳の種別・等級・区分認定』、『高等学校・特別支援学校等での支援状況に関する資料』の割合が比較的高かった。根拠資料別に見ると、『心理検査・知能検査等の結果』は発達障害や診断無+傾向有で比較的割合が高かった。また、診断無+傾向有では根拠資料が『特になし』である割合が最も高かった。
表8の結果から、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由等の身体障害学生では障害者手帳を所持済であることが多く、発達障害の学生で障害者手帳や医師の診断書がない場合には、心理検査等の結果を根拠資料として合理的配慮を受けている、あるいは特に根拠資料がなくても合理的配慮を提供している場合が多いと考えられた。

表8 学校に提出した根拠資料(障害分類別)
区分 視覚障害 聴覚障害 言語障害 肢体不自由 内部障害 発達障害 精神障害 その他の障害 診断無+傾向有 合計
障害者手帳 16
[80.0%]
64
[81.0%]
1
[20.0%]
53
[84.1%]
19
[46.3%]
40
[36.7%]
23
[21.1%]
12
[37.5%]
189
[43.9%]
医師の診断書 16
[80.0%]
52
[65.8%]
5
[100%]
40
[63.5%]
36
[87.8%]
104
[95.4%]
106
[97.2%]
29
[90.6%]
335
[77.7%]
心理検査等 1
[1.3%]
1
[20.0%]
1
[1.6%]
54
[49.5%]
22
[20.2%]
1
[3.1%]
9
[30.0%]
76
[17.6%]
専門家の所見 3
[15.0%]
11
[13.9%]
1
[20.0%]
5
[7.9%]
3
[7.3%]
19
[17.4%]
18
[16.5%]
3
[9.4%]
6
[20.0%]
61
[14.2%]
高校等の資料 10
[50.0%]
24
[30.4%]
1
[20.0%]
18
[28.6%]
7
[17.1%]
20
[18.3%]
7
[6.4%]
5
[15.6%]
3
[10.0%]
82
[19.0%]
特になし 12
[40.0%]
12
[2.8%]
合計 20
[100%
]
79
[100%]
5
[100%
]
63
[100%
]
41
[100%]
109
[100%
]
109
[100%]
32
[100%]
30
[100%]
431
[100%]

【留意点】
ア)各障害分類ならびに根拠資料では重複する場合があるため、合計は一致しない。
イ)表内の各セルにおいて、上段は人数を、下段は各障害分類における構成比(%)を示す。