合理的配慮の提供プロセスと効果評価

1.合理的配慮の提供プロセス

(1)申請した/提供された配慮内容

申請した、あるいは提供された配慮内容の内訳を表9に示す。申請した/提供された配慮内容は質問項目「12:申請した配慮内容」および他の回答内容に基づくコーディング作業の結果により集計された。
表9より、申請した/提供された配慮内容の中で最も多く挙げられたものは『25_授業内容・評価方法の変更・代替』(143人:約33.3%)であり、次いで、『17_教室内座席配慮』(95人:約22.1%)および『29_コミュニケーション上の配慮』(95人:約22.1%)であった。表9の結果は令和元年度の本研究の調査では『8_パソコンテイク』や『7_ノートテイク』が授業支援の内訳としては多く、結果が異なっている。このことは令和元年度と今年度において対象となる学生が異なることや、コーディング作業において配慮内容の定義を変更したことが影響している可能性が考えられる。一方で、令和2年度(今年度)においてはコロナ禍によるオンライン授業への対応に伴って、教室で臨席するノートテイクやパソコンテイク等の実施が難しいことから障害学生への合理的配慮全体として、実施割合が減少した可能性も推察された。
障害分類別に集計した申請した/提供された配慮内容の内訳を表10に示す。

表9 申請した/提供された配慮内容の内訳
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
1.点訳・墨訳 3 0.7
2.教材のテキストデータ化 6 1.4
3.教材の拡大 14 3.3
4.移動・操作補助 15 3.5
5.リーディングサービス 4 0.9
6.手話通訳 21 4.9
7.ノートテイク 46 10.7
8.パソコンテイク 30 7.0
9.ビデオ教材字幕付け 25 5.8
10.チューター又はティーチングアシスタントの活用 9 2.1
11.試験時間延長・別室受験 68 15.8
12.解答方法配慮 16 3.7
13.パソコン等の持込使用許可 21 4.9
14.試験時注意事項等文書伝達 10 2.3
15.使用教室配慮 24 5.6
16.学内実技・実験等配慮 36 8.4
17.教室内座席配慮 95 22.1
18.補聴補助システムの活用 29 6.7
19.専用机・イス・スペース確保 20 4.7
20.読み上げソフト・音声認識ソフトの使用 23 5.3
21.講義内容の記録許可 37 8.6
22.障害・配慮事項の伝達 80 18.6
23.出席に関する配慮 87 20.2
24.学習指導 20 4.7
25.授業内容・評価方法の変更・代替 143 33.3
26.履修登録支援 12 2.8
27.学外実習・フィールドワーク配慮 10 2.3
28.耳栓・イヤホン等の使用 23 5.3
29.コミュニケーション上の配慮 95 22.1
30.その他支援技術・補助具の使用 37 8.6
31.資料データ・紙媒体資料の提供 65 15.1
32.口頭説明の視覚化 50 11.6
33.制度の変更 3 0.7
34.代筆 9 2.1
35.離席・入退室許可 94 21.9
36.水分・栄養剤等の摂取許可 6 1.4
37.オンデマンド動画・資料の期限の柔軟な設定 5 1.2
38.授業情報の予告・リマインド 21 4.9
39.チャット等の使用許可 12 2.8
40.カメラやマイクのオフ 17 4.0
41.話者の口型情報の利用 14 3.3
42.施設設備の整備 22 5.1
43.施設設備の柔軟な運用 28 6.5
44.オンラインによる参加・復習 12 2.8
45.教材のフォントや色の調整 5 1.2
合計 430 100

【留意点】ア)各配慮内容は重複する場合があるため、合計は一致しない。

表10より、視覚障害のある学生では『31_資料データ・紙媒体資料の提供』(16人:約80.0%)を最も多く挙げていた。聴覚障害のある学生では『7_ノートテイク』(32人:約40.5%)を最も多く挙げていた。言語障害のある学生では『29_コミュニケーション上の配慮』(3人:約60.0%)を最も多く挙げていた。肢体不自由のある学生では『35_離席・入退室許可』(22人:約34.9%)を最も多く挙げていた。内部障害のある学生では『23_出席に関する配慮』(16人:約39.0%)を最も多く挙げていた。発達障害のある学生では『25_授業内容・評価方法の変更・代替』(51人:約47.2%)を最も多く挙げていた。精神障害のある学生では『25_授業内容・評価方法の変更・代替』(53人:約48.6%)を最も多く挙げていた。その他の障害のある学生では『35_離席・入退室許可』(13人:約40.6%)を最も多く挙げていた。診断無+傾向有の学生では『授業内容・評価方法の変更・代替』(10人:約33.3%)を最も多く挙げていた。
表10の結果は令和元年度の本研究の調査と比べて、視覚障害、肢体不自由、発達障害において結果が異なっている。表10の結果より、視覚障害の学生において昨年度は教材のテキストデータ化が最も多かったが、コロナ禍において資料が電子的に送付される割合が増加したことにより、資料データ提供の割合が増加した可能性があると考えられた。また、肢体不自由、発達障害においてはコーディング作業において配慮内容の定義を変更したことが影響していると考えられた。

表10 申請した/提供された配慮内容の内訳(障害分類別)
区分 視覚障害 聴覚障害 言語障害 肢体不自由 内部障害 発達障害 精神障害 その他の障害 診断無+傾向有
1.点訳・墨訳 3
[15.0%]
2.テキストデータ 5
[25.0%]
1
[0.9%]
3.教材の拡大 8
[40.0%]
2
[3.2%]
2
[1.9%]
1
[3.1%]
1
[3.3%]
4.移動・操作補助 5
[25.0%]
2
[2.5%]
7
[11.1%]
3
[7.3%]
1
[0.9%]
3
[9.4%]
5.リーディング 4
[20.0%]
6.手話通訳 21
[26.6%]
1
[0.9%]
1
[3.1%]
7.ノートテイク 3
[15.0%]
32
[40.5%]
1
[20.0%]
8
[12.7%]
3
[7.3%]
3
[2.8%]
5
[4.6%]
4
[12.5%]
8.パソコンテイク 28
[35.4%]
1
[1.6%]
1
[0.9%]
2
[6.3%]
1
[3.3%]
9.ビデオ字幕付け 1
[5.0%]
22
[27.8%]
1
[1.6%]
2
[1.9%]
1
[0.9%]
1
[3.1%]
1
[3.3%]
10.TA等活用 3
[15.0%]
1
[1.3%]
1
[20.0%]
1
[1.6%]
2
[1.9%]
1
[0.9%]
1
[3.3%]
11.時間延長等 15
[75.0%]
2
[2.5%]
1
[20.0%]
17
[27.0%]
6
[14.6%]
9
[8.3%]
21
[19.3%]
3
[9.4%]
3
[10.0%]
12.解答方法配慮 4
[20.0%]
6
[9.5%]
1
[2.4%]
3
[2.8%]
1
[0.9%]
2
[6.7%]
13.PC等持込 6
[30.0%]
7
[11.1%]
1
[2.4%]
6
[5.6%]
2
[1.8%]
1
[3.1%]
2
[6.7%]
14.試験時文書 1
[5.0%]
7
[8.9%]
1
[0.9%]
1
[0.9%]
15.教室配慮 2
[2.5%]
12
[19.0%]
4
[9.8%]
3
[2.8%]
4
[3.7%]
3
[9.4%]
2
[6.7%]
16.学内実技等 3
[15.0%]
3
[3.8%]
8
[12.7%]
3
[7.3%]
2
[1.9%]
6
[5.5%]
7
[21.9%]
4
[13.3%]
17.座席配慮 7
[35.0%]
29
[36.7%]
16
[25.4%]
7
[17.1%]
13
[12.0%]
21
[19.3%]
9
[28.1%]
6
[20.0%]
18.補聴補助 26
[32.9%]
1
[0.9%]
2
[6.3%]
2
[6.7%]
19.専用机等 3
[15.0%]
1
[1.3%]
13
[20.6%]
4
[9.8%]
1
[0.9%]
1
[0.9%]
2
[6.3%]
1
[3.3%]
20.ソフト使用 1
[5.0%]
16
[20.3%]
1
[1.6%]
3
[2.8%]
1
[0.9%]
1
[3.1%]
2
[6.7%]
21.講義記録 4
[20.0%]
2
[2.5%]
10
[15.9%]
1
[2.4%]
16
[14.8%]
5
[4.6%]
1
[3.1%]
1
[3.3%]
22.配慮伝達 3
[15.0%]
12
[15.2%]
1
[20.0%]
12
[19.0%]
9
[22.0%]
17
[15.7%]
24
[22.0%]
10
[31.3%]
4
[13.3%]
23.出席配慮 1
[5.0%]
2
[2.5%]
9
[14.3%]
16
[39.0%]
16
[14.8%]
48
[44.0%]
9
[28.1%]
5
[16.7%]
24.学習指導 2
[2.5%]
1
[2.4%]
11
[10.2%]
8
[7.3%]
25.授業変更・代替 3
[15.0%]
11
[13.9%]
8
[12.7%]
12
[29.3%]
51
[47.2%]
53
[48.6%]
9
[28.1%]
10
[33.3%]
26.履修登録支援 3
[15.0%]
1
[1.3%]
1
[20.0%]
1
[2.4%]
5
[4.6%]
2
[1.8%]
1
[3.1%]
27.学外実習 1
[5.0%]
1
[1.3%]
2
[3.2%]
2
[4.9%]
4
[3.7%]
2
[1.8%]
28.耳栓・イヤホン 2
[2.5%]
1
[1.6%]
13
[12.0%]
7
[6.4%]
4
[13.3%]
29.コミュ配慮 3
[15.0%]
15
[19.0%]
3
[60.0%]
3
[4.8%]
3
[7.3%]
45
[41.7%]
32
[29.4%]
4
[12.5%]
5
[16.7%]
30.他の支援技術 9
[45.0%]
5
[6.3%]
7
[11.1%]
5
[12.2%]
4
[3.7%]
5
[4.6%]
6
[18.8%]
2
[6.7%]
31.資料提供 16
[80.0%]
16
[20.3%]
9
[14.3%]
5
[12.2%]
14
[13.0%]
7
[6.4%]
2
[6.3%]
1
[3.3%]
32.口頭視覚化 20
[25.3%]
23
[21.3%]
10
[9.2%]
2
[6.3%]
2
[6.7%]
33.制度変更 1
[1.3%]
1
[0.9%]
1
[0.9%]
34.代筆 4
[20.0%]
4
[6.3%]
1
[2.4%]
1
[3.1%]
35.離席・入退室 1
[5.0%]
5
[6.3%]
22
[34.9%]
14
[34.1%]
20
[18.5%]
28
[25.7%]
13
[40.6%]
9
[30.0%]
36.水分等摂取 2
[4.9%]
2
[1.9%]
2
[1.8%]
37.動画期限 3
[2.8%]
3
[2.8%]
38.予告等 1
[1.3%]
1
[2.4%]
14
[13.0%]
5
[4.6%]
2
[6.7%]
39.チャット等 1
[5.0%]
4
[5.1%]
2
[40.0%]
4
[3.7%]
1
[0.9%]
40.カメラオフ 1
[1.3%]
1
[20.0%]
1
[1.6%]
7
[6.5%]
8
[7.3%]
1
[3.1%]
41.口型情報 12
[15.2%]
1
[0.9%]
1
[0.9%]
42.施設設備 3
[15.0%]
1
[1.3%]
14
[22.2%]
7
[17.1%]
1
[0.9%]
1
[0.9%]
1
[3.1%]
1
[3.3%]
43.施設の運用 1
[5.0%]
2
[2.5%]
17
[27.0%]
6
[14.6%]
5
[4.6%]
2
[1.8%]
2
[6.3%]
44.オンライン参加 3
[3.8%]
1
[1.6%]
2
[4.9%]
3
[2.8%]
4
[3.7%]
1
[3.1%]
1
[3.3%]
45.フォント・色 1
[5.0%]
1
[0.9%]
1
[0.9%]
1
[3.1%]
合計 20
[100%]
79
[100%]
5
[100%]
63
[100%]
41
[100%]
108
[100%]
109
[100%]
32
[100%]
30
[100%]

【留意点】
ア)表内の各セルにおいて、上段は人数を、下段は各障害分類における構成比(%)を示す。
イ)障害が重複する場合があるため、当該障害を理由とした配慮内容とは限らない。特に人数や構成比が小さいものは他の障害との重複により、カウントされやすい。

(2)配慮を必要とした場面

配慮を必要とした場面の内訳を表11に示す。質問項目「18:配慮を必要とした場面」の回答内容に基づき、集計された。
表111より、配慮を必要とした場面として、最も多く挙げられたものは『授業(講義形式)』(375人:約87.0%)であり、次いで、『授業(演習・実験・実習・フィールドワーク形式)』(320人:約74.2%)、『受験・入学』(207人:約48.0%)であった。表11の結果は令和元年度の本研究の調査と比べても同様の構成比であるが、全体的に構成比が令和元年度よりも増加している。このことは、本調査において合理的配慮を受けている障害学生に対象を限定したことで、学生側にとって配慮を必要とした場面の想定がしやすく、構成比を全体的に増加させた可能性が考えられた。

表11 配慮を必要とした場面
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
受験・入学 207 48.0
授業(講義形式) 375 87.0
授業(演習・実験・実習・フィールドワーク形式) 320 74.2
試験の評価、単位取得、卒業要件等 202 46.9
研究指導 90 20.9
事務手続き 97 22.5
施設やサービス(学生寮、図書館等)の利用 76 17.6
正課外の活動、行事、説明会。シンポジウム等への参加 102 23.7
キャリア教育、就職活動 131 30.4
必要と感じていなかった 5 1.2
不明/未回答 4 0.9
合計 430 100.0

【留意点】
ア)配慮内容により場面は重複する場合がある。

(3)学校と学生間の合意形成過程

学校と学生間の合意形成過程の内訳を表12に示す。質問項目「9:合意形成過程」の回答内容に基づき、集計された。
表12より、合意形成で最も多く挙げられたパターンは『A:申し出通りの配慮が提供された』(396人:約91.9%)であり、次いで、『B:申し出とは異なる配慮が提供された』(23人:約5.3%)、『D:申し出たが、配慮は提供されなかった』(12人:約2.8%)であった。表12の結果は令和元年度の本研究の調査と比べて、『C:申し出てはいないが、配慮が提供された』において約10.5%で挙げられていたことに対して、本調査では0人であったことで異なる。このことから、本調査の対象が合理的配慮を受けている障害学生であったことを考慮すると、合理的配慮以外の支援においては申請しなくても支援が提供される場合があり、合理的配慮については一貫して申請に基づき対応されていたことを示す結果であると言える。なお、申し出通りの配慮が提供された割合が約91.9%と非常に高い割合であるが、本調査の対象となった障害学生は障害学生支援部署から連絡を受け取り、一定の関係性ができていることを考慮すると、合理的配慮を肯定的に捉えている学生が全障害学生と比べて比較的多い可能性が考えられた。つまり、本調査の対象となっていないが、合理的配慮を申し出たものの、配慮が提供されず、障害学生支援部署との関係が途切れている学生の存在に留意すべきである。

表12 学校と学生間の合意形成過程の内訳
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
A:申し出通りの配慮が提供された 396 91.9
B:申し出とは異なる配慮が提供された 23 5.3
C:申し出てはいないが、配慮が提供された 0
D:申し出たが、配慮は提供されなかった 12 2.8
合計 431 100.0

(4)配慮申請時期から現在までの期間

最初に配慮申請を行ってから本調査終了時(2021年2月)までの期間を表13に示す。質問項目「10:配慮の申請時期」の回答内容に基づき、本調査終了時の年月から減算することにより、月数として算出した。その後、月数について12か月単位でカテゴリ化を行った。
表13より、配慮申請時期から現在までの期間(配慮期間)として、最も多く挙げられたものは『1年〜2年以内』(139人:約32.3%)であり、次いで、『1年以内』(136人:約31.6%)、『2年〜3年以内』(79人:約18.3%)であった。表13の結果は表4の学年の構成比を考慮すると、『1年以内』の割合が比較的高く、『3年〜』の割合が比較的低かった。この点は、今後、学年と配慮期間の関係性を詳細に分析する必要があると考えられる。

表13 配慮申請時期から現在までの期間
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
1年以内 136 31.6
1年~2年以内 139 32.3
2年~3年以内 79 18.3
3年~4年以内 41 9.5
4年~ 19 4.4
不明/未回答 17 3.9
合計 431 100.0

(5)配慮申請者

障害分類別に集計した、最初に配慮申請を行った際の配慮申請者の内訳を表14に示す。質問項目「11:配慮の申請者」の回答内容に基づき、集計した。
表14より、学生が『自分から』配慮申請を行ったものは303人(約70.6%)であり、『保護者等の関係者から』配慮申請を行ったものは126人(約29.4%)であった。障害分類別にみて、どの障害分類においても学生が『自分から』配慮申請を行ったものが比較的多かった。表14の結果から、大学等において合理的配慮を最初に申請するものは基本的に学生であることが多いが、約3割の学生では保護者等の関係者が最初に申請をすることもあり、保護者等の関係者から申請される場合の合理的配慮の提供プロセスにどの程度学生本人の意志が反映されているかについては今後の調査が必要であると考えられた。

表14 配慮申請者(障害分類別)
区分 自分から 保護者等の関係者から
視覚障害 15
[75.0%]
5
[25.0%]
うち盲 6
[85.7%]
1
[14.3%]
うち弱視 9
[69.2%]
4
[30.8%]
聴覚障害 59
[74.7%]
20
[25.3%]
うち聾 44
[80.0%]
11
[20.0%]
うち難聴 15
[62.5%]
9
[37.5%]
言語障害 3
[60.0%]
2
[40.0%]
肢体不自由 42
[66.7%]
21
[33.3%]
うち上肢機能障害 4
[66.7%]
2
[33.3%]
うち下肢機能障害 10
[58.8%]
7
[41.2%]
うち上下肢機能障害 27
[71.1%]
11
[28.9%]
うち他の機能障害 7
[53.8%]
6
[46.2%]
内部障害 27
[65.9%]
14
[34.1%]
発達障害 72
[67.3%]
35
[32.7%]
うち自閉スペクトラム症 49
[62.8%]
29
[37.2%]
うち注意欠如・多動症 36
[76.6%]
11
[23.4%]
うち限局性学習症 9
[90.0%]
1
[10.0%]
精神障害 78
[71.6%]
31
[28.4%]
うち統合失調症等 6
[75.0%]
2
[25.0%]
うち気分障害 36
[80.0%]
9
[20.0%]
うち神経症性障害 32
[72.7%]
12
[27.3%]
うち摂食障害・睡眠障害等 5
[50.0%]
5
[50.0%]
うち他の精神障害 21
[72.4%]
8
[27.6%]
その他の障害 21
[65.6%]
11
[34.4%]
診断無+傾向有 21
[70.0%]
9
[30.0%]
合計 303
[70.6%]
126
[29.4%]

【留意点】
ア)各障害分類では重複する場合があり、小計や合計は一致しないことがある。
イ)表内の各セルにおいて、左部は人数を、右部は各障害分類における各回答の構成比(%)を示す。
ウ)最下段は回答のあった障害学生全体における各回答の人数と構成比を示す。

2.配慮内容に関する効果評価

(1)学生本人が満足している配慮内容

学生本人が満足している配慮内容のうち、構成比が大きいものを表15に示す。質問項目「14:満足している配慮内容」の回答内容に基づくコーディング作業の結果により集計された。
表15より、学生本人が満足している配慮内容のうち、構成比が最も大きいものは『1_点訳・墨訳』(3人/3人:100.0%)であり、次いで、『34_代筆』(8人/9人:約88.9%)、『28_耳栓・イヤホン等の使用』(20人/23人:約87.0%)、『2_教材のテキストデータ化』(5人/6人:約83.3%)、『8_パソコンテイク』(25人/30人:約83.3%)であった。
また、学生本人が満足している配慮内容の理由について、構成比順に表16に示す。質問項目「15:満足している配慮内容の理由」の回答内容を構成比順に記載した。表16より、『1_点訳・墨訳』および『34_代筆』については必ずしも当該配慮内容に特定化された理由は見られなかった。『28_耳栓・イヤホン等の使用』については、主に自閉スペクトラム症(ASD)の診断または傾向のある学生において、授業中の不要な音を軽減し、授業に集中しやすくなるという機能を肯定的に評価していた。また、耳栓・イヤホン等を使用することについて周囲の学生からの反応を気にすることがあり、周囲の学生への説明や対応を適切に行うことに対して肯定的に評価されていた。『2_教材のテキストデータ化』については、スクリーンリーダーを使用する視覚障害の学生や限局性学習症(SLD)の学生において、目で文字を読む必要性がなくなり、学びやすくなったことが評価されていた。『8_パソコンテイク』については、聴覚障害の学生において、自身が希望する授業の全て、あるいはほとんどに対して配置するとともに、パソコンテイクを行うテイカーの質が保証されていれば、配慮なしの状況よりも得られる情報量が多いことが評価されていた。

表15 学生本人が満足している配慮内容(構成比順)
区分 該当人数(人) 対象人数(人) 構成比(%)
1.点訳・墨訳 3 3 100.0
34.代筆 8 9 88.9
28.耳栓・イヤホン等の使用 20 23 87.0
2.教材のテキストデータ化 5 6 83.3
8.パソコンテイク 25 30 83.3

【留意点】
ア)該当人数は「14:満足している配慮内容」に挙げた人数を示し、対象人数は「12:申請した/提供された配慮内容」の人数を示す。構成比は該当人数を対象人数で除算して、100を乗ずることで算出した。
イ)表には構成比が大きいもののうち、上位5件のみを掲載した。
ウ)「14:満足している配慮内容」に対して、“すべて”と回答している場合もあり、各配慮内容に同程度に満足している程度が重み付けされているわけではない。

(2)学生本人が満足していない配慮内容

学生本人が満足していない配慮内容のうち、構成比が多いものを表17に示す。質問項目「16:満足していない配慮内容」の回答内容に基づくコーディング作業の結果により集計された。
表17より、学生本人が満足している配慮内容のうち、構成比が最も大きいものは『15_使用教室配慮』(6人/24人:約25.0%)であり、次いで、『7_ノートテイク』(9人/46人:約19.6%)、『42_施設設備の整備』(4人/22人:約18.2%)、『22_障害・配慮事項の伝達』(14人/80人:約17.5%)、『26_履修登録支援』(2人/12人:約16.7%)であった。表17より満足している配慮内容と比べても、満足していない配慮内容の構成比は小さく、申請した/提供された配慮内容に不満足である障害学生は比較的少ないことを示す結果であった。
また、学生本人が満足していない配慮内容の理由について、構成比順に表18に示す。質問項目「17:満足していない配慮内容の理由」の回答内容を構成比順に記載した。表18より、『15_使用教室配慮』については、肢体不自由や慢性疾患・内部障害等のある学生において、移動の困難を考慮した教室の変更や扉の常時開放を希望したものの、担当者の交代により適切に対応されなくなったこと、また、教室内の温度環境の調整において障害学生自身が気兼ねする、頼みづらいことが示された。『7_ノートテイク』では、聴覚障害のある学生において、テイカーの質保証や、希望する授業とテイカーとのマッチングの問題、ノートテイクという情報保障方法の限界、人に頼るという心理的な抵抗感などが挙げられた。『42_施設設備の整備』については、肢体不自由のある学生において、建物の構造上、スロープやエレベーターを利用することができない、車いす用トイレはあるものの他学生の利用があって必要な時に使えないなどの課題が挙げられていた。『22_障害・配慮事項の伝達』については、授業担当教員等に適切に配慮内容が伝達されなかったこと、配慮事項が文書等により伝達されたとしても「他学生と平等」のような理由により一部の授業で配慮を提供されなかったこと、学生の障害に関する理解が不足している教職員がいて障害学生を心理的に傷つけるような言動があったこと、症状がひどい時でも学生自身からの申し出が必要となったことなどが示された。『26_履修登録支援』については、オンラインで確認しなければいけない内容が多く、履修登録の補助がうまく果たされなかったことなどが記述された。

表17 学生本人が満足していない配慮内容(構成比順)
区分 該当人数(人) 対象人数(人) 構成比(%)
15.使用教室配慮 6 24 25.0
7.ノートテイク 9 46 19.6
42.施設設備の整備 4 22 18.2
22.障害・配慮事項の伝達 14 80 17.5
26.履修登録支援 2 12 16.7

【留意点】
ア)該当人数は「16:満足していない配慮内容」に挙げた人数を示し、対象人数は「12:申請した/提供された配慮内容」の人数を示す。構成比は該当人数を対象人数で除算して、100を乗ずることで算出した。
イ)表には構成比が大きいもののうち、上位5件のみを掲載した。
ウ)「16:満足していない配慮内容」に対して、“すべて”と回答している場合もあり、各配慮内容に同程度に満足していない程度が重み付けされているわけではない。

(3)各障害分類の総合満足度評価

障害分類別に集計した総合満足度評価を表19に示す。総合満足度評価の算出にあたり、質問項目「19:満足度評価」の9項目について『1:全くそう思わない』から『5:とてもそう思う』までの5件法を点数化した上で、9項目の点数の平均値を各障害学生における総合満足度とした。値が大きいほど満足度が高いことを示し、値が小さいほど、満足度が低いことを示す。なお、一つの項目でも『非該当』や未入力がある場合には分析対象から除外した。
表19より、総合満足度評価において最も総合満足度が高かった障害分類は『精神障害(摂食障害、睡眠障害等)』(9人:約4.44点)であり、次いで、『診断無+傾向有』(29人:約4.41点)、『精神障害(不安障害、強迫性障害等の神経症性障害)』(40人:約4.36点)であった。また、最も総合満足度が低かった障害分類は『肢体不自由(上肢機能障害)』(5人、約3.64点)であり、次いで、『視覚障害(盲)』(7人:約3.67点)、『発達障害(SLD:限局性学習症)』(7人:約3.71点)であった。障害学生全体で見ると平均値は約4.24点(390人)であるが、平均値+1SDが最大値の5点を超えることから、天井効果があること(つまり、本調査の対象者は高評価に偏っていること)が確認された。
表19の結果は令和元年度の本研究の調査と比べて、障害分類ごとの結果が異なっている。この点は、あくまでも総合満足度評価は配慮の申請から提供までの過程に対する総評を求めており、本調査の対象が合理的配慮を受けている障害学生に限定されていたことや、配慮内容の状況が異なっていることに影響を受けていると考えられる。
総合満足度評価について、満足度の高い学生と低い学生での理由の内訳を表20に示す。総合満足度が平均値-1SD以下である学生を低評価群とした。高評価群は天井効果が見られていたことから、総合満足度が平均値以上の学生とした。高評価群および低評価群について、質問項目「20:満足度評価の理由」の回答内容を記載した。
表20より、高評価群においては、丁寧な説明をすること、申請後に迅速に対応すること、親身に相談に乗ってくれること、障害や授業に関する知識があること、希望した配慮内容の全てあるいは多くを満たすこと、配慮提供後の学生生活で改善が見られること、などが理由として挙げられていた。低評価群においては、必要な配慮についての情報提供がないこと、申請後の対応が遅いこと、相談担当者の人柄に対する不満、障害に対して理解がなかったり、配慮の提供をしない教員がいること、希望した配慮内容が提供されなかったこと、障害学生自身で必要な手配をしなければならないこと、課外活動など授業外での対応がされないこと、相談担当者の異動・交代に伴って対応が遅れること、複数の支援部署間での連携がスムーズでないこと、医学的診断がないために配慮申請に至らないことなどが挙げられた。

表19 総合満足度評価(障害分類別)
区分 障害学生数(人) 平均値 標準偏差 最小値 最大値
視覚障害 19 4.04 0.98 1.22 5.00
うち盲 7 3.67 1.40 1.22 4.89
うち弱視 12 4.26 0.62 3.11 5.00
聴覚障害 65 4.22 0.75 1.44 5.00
うち聾 44 4.22 0.82 1.44 5.00
うち難聴 21 4.22 0.60 3.11 5.00
言語障害 4 4.36 0.47 3.89 5.00
肢体不自由 57 4.20 0.95 1.00 5.00
うち上肢機能障害 5 3.64 0.92 2.78 5.00
うち下肢機能障害 17 4.35 0.87 1.67 5.00
うち上下肢機能障害 34 4.19 0.97 1.00 5.00
うち他の機能障害 12 3.93 1.13 1.00 5.00
内部障害 39 4.24 0.93 1.00 5.00
発達障害 97 4.11 0.79 1.78 5.00
うち自閉スペクトラム症 71 4.09 0.84 1.78 5.00
うち注意欠如・多動症 44 3.93 0.90 1.78 5.00
うち限局性学習症 7 3.71 0.92 2.78 5.00
精神障害 103 4.26 0.76 1.00 5.00
うち統合失調症等 8 4.11 0.78 2.89 5.00
うち気分障害 42 4.26 0.80 1.00 5.00
うち神経症性障害 40 4.36 0.63 2.89 5.00
うち摂食障害・睡眠障害等 9 4.44 0.44 3.89 5.00
うち他の精神障害 27 4.08 0.86 1.22 5.00
その他の障害 32 4.34 0.64 3.00 5.00
診断無+傾向有 29 4.41 0.66 2.33 5.00
合計 390 4.24 0.79 1.00 5.00

【留意点】
ア)平均値のため、人数が少ないものは満足度評価が偏る可能性がある。
イ)重複障害のある学生では、特定の障害分類に対する満足度評価が他の障害分類に対する満足度評価に影響している可能性がある。

(4)配慮提供後の関連指標の変化

配慮提供により、学生の満足度のみならず、成績や単位取得割合、修学上の困難感など満足度と関連する他の指標(関連指標)も変化するかを分析した。配慮提供後の各関連指標の変化を表21に示す。質問項目「21:成績」、「22:単位取得割合」、「23:修学上の困り感」の回答内容に基づき、集計された。表21より、障害学生全体において、配慮提供後に『成績が向上した』と回答した学生の構成比は約39.6%(120人)、『単位を取得した割合が増加した』と回答した学生の構成比は約38.0%(113人)、『修学上の困り感が減少した』と回答した学生の構成比は約79.6%(269人)であった。このことから、成績や単位取得割合のような学業成績の向上に対して合理的配慮は直結しない場合が比較的多く、どちらかと言えば修学上の困難感のような障害学生側での心理的な変化をもたらす場合が比較的多いと考えられた。

表21-1 配慮提供後の関連指標の変化:成績
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
成績が向上した 120 39.6
成績が悪化した 9 3.0
変わらない 174 57.4
合計 303 100.0
表21-2 配慮提供後の関連指標の変化:単位取得割合
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
単位を取得した割合が増加した 113 38.0
単位を取得した割合が減少した 9 3.0
変わらない 175 58.9
合計 297 100.0
表21-3 配慮提供後の関連指標の変化:修学上の困り感
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
修学上の困り感が増加した 10 3.0
修学上の困り感が減少した 269 79.6
変わらない 59 17.5
合計 338 100.0

障害分類別に集計した、配慮提供後の関連指標の変化を表22に示す。質問項目「21:成績」、「22:単位取得割合」、「23:修学上の困り感」の回答内容に基づき、それぞれ『成績が向上した』、『単位を取得した割合が増加した』、『修学上の困り感が減少した』の回答の人数と構成比を算出した。表22より、障害分類別に見ると、発達障害や精神障害においては平均値を上回る程度で成績や単位取得割合の改善を自覚する回答が多く見られていた。このことは、表10において発達障害や精神障害のある学生に最も行われる配慮内容が『25_授業内容・評価方法の変更・代替』であったことから、当該障害分類においてよく行われる配慮内容が成績や単位取得割合に直結するような内容であったことが関係していると推察された。

表22 配慮提供後の関連指標の変化(障害分類別)
区分 成績が向上 単位習得割合が増加 修学上の困り感が減少
視覚障害 4
[30.8%]
3
[25.0%]
12
[100.0%]
うち盲 1
[33.3%]
0
[0.0%]
4
[100.0%]
うち弱視 3
[30.0%]
3
[33.3%]
8
[100.0%]
聴覚障害 21
[46.7%]
15
[34.9%]
35
[72.9%]
うち聾 14
[46.7%]
13
[46.4%]
23
[74.2%]
うち難聴 7
[46.7%]
2
[13.3%]
12
[70.6%]
言語障害 1
[50.0%]
1
[100.0%]
2
[100.0%]
肢体不自由 11
[26.8%]
10
[23.3%]
34
[72.3%]
うち上肢機能障害 1
[50.0%]
1
[50.0%]
1
[50.0%]
うち下肢機能障害 1
[7.7%]
1
[7.7%]
8
[57.1%]
うち上下肢機能障害 9
[34.6%]
8
[28.6%]
25
[80.6%]
うち他の機能障害 1
[20.0%]
2
[40.0%]
5
[83.3%]
内部障害 5
[16.1%]
6
[19.4%]
30
[83.3%]
発達障害 37
[42.0%]
39
[46.4%]
72
[76.6%]
うち自閉スペクトラム症 26
[40.0%]
30
[48.4%]
53
[76.8%]
うち注意欠如・多動症 18
[43.9%]
20
[51.3%]
31
[72.1%]
うち限局性学習症 2
[28.6%]
2
[33.3%]
5
[71.4%]
精神障害 35
[43.2%]
40
[50.6%]
75
[76.5%]
うち統合失調症等 0
[0.0%]
2
[40.0%]
5
[62.5%]
うち気分障害 16
[42.1%]
19
[51.4%]
33
[76.7%]
うち神経症性障害 15
[48.4%]
14
[48.3%]
30
[78.9%]
うち摂食障害・睡眠障害等 4
[57.1%]
5
[55.6%]
7
[70.0%]
うち他の精神障害 9
[42.9%]
10
[45.5%]
18
[75.0%]
その他の障害 8
[33.3%]
6
[25.0%]
23
[88.5%]
診断無+傾向有 9
[42.9%]
6
[30.0%]
20
[95.2%]
合計 120
[39.6%]
113
[38.0%]
269
[79.6%]

【留意点】
ア)各障害分類では重複する場合があり、小計や合計は一致しないことがある。
イ)表内の各セルにおいて、左部は人数を、右部は各セルにおいて「#:非該当」を除く全回答者のうちに占める当該回答者の構成比を示す。そのため、同じ障害分類でも構成比が異なることがある。

注意:下記の表については情報量が多いため、HTML上では割愛しております。PDF版をご確認ください。

  • 表16 学生本人が満足している配慮内容の理由(構成比順)
  • 表18 学生本人が満足していない配慮内容の理由(構成比順)
  • 表20 満足度評価の理由