オンライン授業における修学支援

1.オンライン授業の経験

(1)コロナ禍で経験した授業形式

新型コロナウィルス感染症が拡大した2020年度(コロナ禍)に経験した授業形式の内訳を表23に示す。質問項目「24:経験した授業形式」の回答内容に基づき、集計された。構成比は、全障害学生のうちに占める割合を示す。
表23より、コロナ禍で学生が経験した授業形式では『オンライン授業(リアルタイム授業)』(385人:約89.3%)が最も多く、次いで、『オンライン授業(オンデマンド動画授業)』(370人:約85.8%)、『オンライン授業(オンデマンド資料配布型授業)』(334人:約77.5%)、『対面授業』(266人:約61.7%)であった。

表23 コロナ禍に経験した授業形式
区分 障害学生数(人) 構成比(%)
対面授業(教室で教員と学生が同室で受ける授業) 266 61.7
オンライン授業(リアルタイム授業:同時配信授業) 385 89.3
オンライン授業(オンデマンド動画授業:動画視聴) 370 85.8
オンライン授業(オンデマンド資料配布型授業:音声付き資料データなど、動画以外の資料確認) 334 77.5
対面授業とオンライン授業のハイブリッド 175 40.6
オンライン授業を受けたことがない 8 1.9
その他 6 1.4
(不明/未回答) 6 1.4
合計 431 100.0

【留意点】
ア)各授業形式では重複する場合があるため、合計は一致しない。

(2)オンラインシステムの利用

オンライン授業で使用する各種オンラインシステムの操作方法についての内訳を表24に示す。質問項目「25:オンラインシステムの操作」の回答内容に基づき、4つの項目について「はい」と回答した人数と各障害分類における構成比を集計した。
表24より、障害学生全体では、約77.1%(303人)で『1_オンライン授業で使用する各種オンラインシステムの操作方法について十分な説明を受けることができた』と回答し、約75.3%(229人)で『2_オンライン授業で使用する各種オンラインシステムの操作方法がわからない時にサポートを受けることができた』と回答していた。また、『3_オンライン授業で使用する各種オンラインシステムの操作方法で困る場面があった』は約47.4%(188人)であり、『4_オンライン授業で使用する各種オンラインシステムの操作方法について個別に補足的な説明を学校から受けた』は約38.8%(143人)であった。
障害分類別に見ると、視覚障害のある学生で『1_十分な説明』や『2_サポート』、『4_個別の補足』の割合が比較的小さく、『3_操作で困る場面』の割合が比較的大きかった。つまり、視覚障害のある学生では他の障害学生と比べて各種オンラインシステムの操作場面で困る場面がある学生が多いにもかかわらず、十分な説明やわからない時のサポート、個別の補足説明が不足している可能性が考えられた。

表24 オンラインシステムの利用(障害分類別)
区分 1.十分な説明 2. サポート 3.操作で困る場面 4.個別の補足
視覚障害 13
[65.0%]
7
[50.0%]
11
[55.0%]
2
[11.8%]
うち盲 4
[57.1%]
1
[20.0%]
4
[57.1%]
1
[14.3%]
うち弱視 9
[69.2%]
6
[66.7%]
7
[53.8%]
1
[10.0%]
聴覚障害 68
[88.3%]
48
[76.2%]
39
[51.3%]
32
[44.4%]
うち聾 49
[90.7%]
31
[73.8%]
24
[46.2%]
26
[53.1%]
うち難聴 19
[82.6%]
17
[81.0%]
15
[62.5%]
6
[26.1%]
言語障害 3
[75.0%]
2
[100.0%]
1
[25.0%]
1
[25.0%]
肢体不自由 47
[85.5%]
33
[82.5%]
26
[45.6%]
19
[35.8%]
うち上肢機能障害 6
[100.0%]
4
[100.0%]
1
[16.7%]
1
[16.7%]
うち下肢機能障害 12
[80.0%]
7
[77.8%]
7
[43.8%]
7
[46.7%]
うち上下肢機能障害 29
[87.9%]
22
[81.5%]
16
[47.1%]
13
[41.9%]
うち他の機能障害 11
[91.7%]
8
[88.9%]
6
[50.0%]
4
[33.3%]
内部障害 30
[75.0%]
23
[74.2%]
16
[40.0%]
12
[32.4%]
発達障害 69
[71.9%]
63
[76.8%]
48
[50.5%]
38
[43.2%]
うち自閉スペクトラム症 52
[74.3%]
50
[82.0%]
35
[50.7%]
29
[44.6%]
うち注意欠如・多動症 29
[65.9%]
31
[77.5%]
21
[46.7%]
17
[40.5%]
うち限局性学習症 5
[62.5%]
4
[50.0%]
2
[25.0%]
3
[37.5%]
精神障害 74
[77.1%]
48
[73.8%]
45
[44.1%]
32
[34.4%]
うち統合失調症等 6
[100.0%]
5
[100.0%]
5
[71.4%]
4
[57.1%]
うち気分障害 25
[67.6%]
12
[52.2%]
15
[37.5%]
9
[27.3%]
うち神経症性障害 32
[82.1%]
23
[85.2%]
18
[41.9%]
15
[37.5%]
うち摂食障害・睡眠障害等 6
[66.7%]
1
[25.0%]
3
[30.0%]
1
[11.1%]
うち他の精神障害 20
[80.0%]
13
[81.3%]
11
[42.3%]
9
[39.1%]
その他の障害 24
[75.0%]
25
[83.3%]
11
[34.4%]
8
[28.6%]
診断無+傾向有 21
[75.0%]
18
[81.8%]
14
[53.8%]
11
[44.0%]
合計 303
[77.1%]
229
[75.3%]
188
[47.4%]
143
[38.8%]

【留意点】
ア)各障害分類では重複する場合があるため、小計や合計は一致しないことがある。
イ)表内の各セルにおいて、上段は人数を、下段は各セルにおいて「#:非該当」を除く全回答者のうちに占める当該回答者の構成比を示す。そのため、同じ障害分類でも構成比が異なることがある。
ウ)最下段は障害学生全体において各項目で「はい」と回答した人数と「#:非該当」を除く全回答者のうちに占める当該回答者の構成比を示す。

(3)オンライン授業で役立ったこと

障害分類別に集計された、オンライン授業で役立ったことについての内訳を表25に示す。質問項目「26:オンライン授業で役立ったこと」の回答内容に基づき、集計された。
表25より、オンライン授業で役立ったことの中で最も多かったものは『12_教室や自宅など場所を問わずアクセスできること』(262人:約65.7%)であり、次いで、『10_動画教材に複数回アクセスできること』(228人:約57.1%)、『11_動画教材に時間を問わずアクセスできること』(226人:約56.6%)であった。この点は、障害学生のみならず、大学生一般でも挙げられるオンライン授業の利点と考えられる。
障害分類別に見ると、視覚障害のある学生では『8_資料が電子媒体で提供されること』(15人:約75.0%)が最も多く挙げられていた。聴覚障害や言語障害のある学生では『4_チャットが使えること』(聴覚障害56人:約71.8%、言語障害3人:100.0%)が最も多く挙げられていた。肢体不自由や慢性疾患・内部障害、精神障害、その他の障害のある学生では『12_教室や自宅など場所を問わずアクセスできること』(肢体不自由46人:約83.6%、慢性疾患・内部障害27人:約73.0%、精神障害75人:約72.8%、その他の障害19人:約61.3%)が最も多く挙げられていた。発達障害のある学生では『10_動画教材に複数回アクセスできること』(76人:約77.6%)が最も多く挙げられていた。
オンライン授業で役立ったことの理由を表26に示す。質問項目「27:オンライン授業で役立ったことの理由」の回答内容を「26:オンライン授業で役立ったこと」で構成比が多い順に記載した。表26から、『12_教室や自宅など場所を問わずアクセスできること』は肢体不自由のある学生における移動の困難を解消し、体調不良等が生じやすい慢性疾患・内部障害等のある学生が体力を消耗せずに授業に参加できることなどが役立ったことの理由として挙げられていた。『10_動画教材に複数回アクセスできること』については、見逃したり、聞き逃した講義内容を理解・確認できることが役立ったことの理由として挙げられていた。『11_動画教材に時間を問わずアクセスできること』は睡眠や体調が安定しない障害学生が自分のリズムに合わせて受講できることが挙げられていた。その他、『4_チャットが使えること』で音声コミュニケーションに困難のある聴覚障害や言語障害、発達障害学生が文字で質問ややりとりできることが挙げられていた。『8_資料が電子媒体で提供されること』は、スクリーンリーダーを使用する視覚障害のある学生や、発達障害学生が自身にとって読みやすいフォントや字に変更する等で利用されていた。

表25 オンライン授業で役立ったこと(障害分類別)
区分 視覚障害 聴覚障害 言語障害 肢体不自由 内部障害 発達障害 精神障害 その他の障害 診断無+傾向有 合計
1_自動字幕 40
[51.3%]
4
[7.3%]
1
[2.7%]
17
[17.3%]
6
[5.8%]
2
[6.5%]
4
[13.8%]
67
[16.8%]
2_カメラ 8
[40.0%]
28
[35.9%]
18
[32.7%]
15
[40.5%]
51
[52.0%]
56
[54.4%]
10
[32.3%]
11
[37.9%]
171
[42.9%]
3_マイク 5
[25.0%]
30
[38.5%]
15
[27.3%]
10
[27.0%]
50
[51.0%]
53
[51.5%]
11
[35.5%]
10
[34.5%]
161
[40.4%]
4_チャット 4
[20.0%]
56
[71.8%]
3
[100%]
12
[21.8%]
11
[29.7%]
58
[59.2%]
47
[45.6%]
11
[35.5%]
15
[51.7%]
190
[47.6%]
5_画面共有 6
[30.0%]
30
[38.5%]
1
[33.3%]
10
[18.2%]
1
[2.7%]
18
[18.4%]
11
[10.7%]
3
[9.7%]
5
[17.2%]
76
[19.0%]
6_挙手 1
[5.0%]
23
[29.5%]
1
[33.3%]
9
[16.4%]
3
[8.1%]
31
[31.6%]
17
[16.5%]
4
[12.9%]
6
[20.7%]
82
[20.6%]
7_音量変更 3
[15.0%]
42
[53.8%]
11
[20.0%]
3
[8.1%]
41
[41.8%]
29
[28.2%]
10
[32.3%]
13
[44.8%]
127
[31.8%]
8_電子資料 15
[75.0%]
40
[51.3%]
23
[41.8%]
11
[29.7%]
44
[44.9%]
25
[24.3%]
12
[38.7%]
14
[48.3%]
160
[40.1%]
9_再生/停止 13
[65.0%]
49
[62.8%]
26
[47.3%]
14
[37.8%]
64
[65.3%]
47
[45.6%]
13
[41.9%]
19
[65.5%]
213
[53.4%]
10_複数視聴 12
[60.0%]
47
[60.3%]
27
[49.1%]
14
[37.8%]
76
[77.6%]
55
[53.4%]
15
[48.4%]
16
[55.2%]
228
[57.1%]
11_時間不問 12
[60.0%]
40
[51.3%]
26
[47.3%]
17
[45.9%]
67
[68.4%]
67
[65.0%]
13
[41.9%]
12
[41.4%]
226
[56.6%]
12_場所不問 12
[60.0%]
39
[50.0%]
46
[83.6%]
27
[73.0%]
74
[75.5%]
75
[72.8%]
19
[61.3%]
15
[51.7%]
262
[65.7%]
13_電子課題 14 [70.0%] 28
[35.9%]
20
[36.4%]
14
[37.8%]
45
[45.9%]
42
[40.8%]
12
[38.7%]
15
[51.7%]
164
[41.1%]

【留意点】
ア)最左列はオンライン授業で役立ったことを簡略化して示す。
イ)表内の各セルにおいて、上段は人数を、下段は各障害分類における構成比を示す。最右列は各回答の人数と未回答者を除く全回答者のうちに占める当該回答者の構成比を示す。
ウ)障害が重複する場合があるため、当該障害を理由とした内容とは限らない。特に人数や構成比が小さいものは他の障害との重複により、カウントされやすい。

(4)オンライン授業で困ったこと・課題

障害分類別に集計した、オンライン授業で困ったこと・課題についての内訳を表27に示す。質問項目「28:オンライン授業で困ったことや課題に感じたこと」の回答内容に基づき、集計された。
表27より、オンライン授業で困ったこと・課題の中で最も多かったものは『13_目が疲れた』(147人:約34.5%)であり、次いで、『15_集中力が続かなかった』(126人:約29.6%)であった。また、オンライン授業で『17_特に困ったことや課題は感じなかった』と回答する学生も約25.4%(108人)見られた。目の疲労や集中力は障害の有無にかかわらず指摘される課題でもあり、また、障害学生において授業で特に困ったことや課題を感じなかったということはオンライン授業で一定程度アクセスできることを裏付ける結果であるかもしれない。
障害分類別に見ると、視覚障害のある学生では『5_動画・映像で映されているものが見えなかった』(11人:約55.0%)を最も多く挙げていた。聴覚障害のある学生では『11_話している人の顔や口元が見えなかった』(28人:約35.9%)を最も多く挙げていた。肢体不自由やその他の障害のある学生では『17_特に困ったことや課題は感じなかった』(肢体不自由23人:約37.1%、その他の障害15人:約46.9%)が最も多かった。発達障害や精神障害のある学生では『15_集中力が続かなかった』(発達障害48人:約44.9%、精神障害36人:約33.6%)が最も多かった。

表27 オンライン授業で困ったこと・課題(障害分類別)
区分 視覚障害 聴覚障害 言語障害 肢体不自由 内部障害 発達障害 精神障害 その他の障害 診断無+傾向有 合計
1_ システム操作  がわからない 8 [40.0%] 6
[7.7%]
6
[9.7%]
3
[7.5%]
17
[15.9%]
12
[11.2%]
5
[16.7%]
51
[12.0%]
2_PC操作困難 5
[25.0%]
2
[2.6%]
1
[20.0%]
6
[9.7%]
1
[2.5%]
17
[15.9%]
9
[8.4%]
1
[3.1%]
6
[20.0%]
43
[10.1%]
3_ 資料の 読み上げ不可 4
[20.0%]
1
[1.3%]
1
[1.6%]
3
[2.8%]
3
[2.8%]
1
[3.1%]
3
[10.0%]
15
[3.5%]
4_資料入手困難 1
[5.0%]
3
[3.8%]
4
[6.5%]
1
[2.5%]
6
[5.6%]
3
[2.8%]
2
[6.7%]
17
[4.0%]
5_映像取得困難 11
[55.0%]
2
[2.6%]
2
[3.2%]
1
[2.5%]
3
[2.8%]
4
[3.7%]
1
[3.1%]
2
[6.7%]
23
[5.4%]
6_音声取得困難 3
[15.0%]
26
[33.3%]
4
[6.5%]
2
[5.0%]
16
[15.0%]
8
[7.5%]
2
[6.3%]
9
[30.0%]
62
[14.6%]
7_字幕の誤字 21
[26.9%]
2
[1.9%]
1
[0.9%]
2
[6.7%]
25
[5.9%]
8_字幕の重なり 11
[14.1%]
1
[0.9%]
1
[0.9%]
12
[2.8%]
9_音声の小ささ 4
[20.0%]
24
[30.8%]
7
[11.3%]
4
[10.0%]
20
[18.7%]
14
[13.1%]
3
[9.4%]
10
[33.3%]
74
[17.4%]
10_板書なし 1
[5.0%]
7
[9.0%]
7
[11.3%]
4
[10.0%]
14
[13.1%]
10
[9.3%]
2
[6.3%]
8
[26.7%]
44
[10.3%]
11_ 話者の顔が 見えない 1
[5.0%]
28
[35.9%]
2
[3.2%]
1
[2.5%]
5
[4.7%]
5
[4.7%]
3
[9.4%]
7
[23.3%]
46
[10.8%]
12_ 他者映像が   見えない 1
[5.0%]
10
[12.8%]
1
[20.0%]
1
[1.6%]
6
[5.6%]
9
[8.4%]
1
[3.1%]
3
[10.0%]
31
[7.3%]
13_目の疲労 8
[40.0%]
35
[44.9%]
1
[20.0%]
17
[27.4%]
15
[37.5%]
33
[30.8%]
30
[28.0%]
11
[34.4%]
14
[46.7%]
147
[34.5%]
14_ 先生と対話・ 質問困難 5
[25.0%]
19
[24.4%]
2
[40.0%]
11
[17.7%]
7
[17.5%]
25
[23.4%]
25
[23.4%]
5
[15.6%]
8
[26.7%]
95
[22.3%]
15_ 集中力が   続かない 3
[15.0%]
22
[28.2%]
11
[17.7%]
3
[7.5%]
48
[44.9%]
36
[33.6%]
4
[12.5%]
14
[46.7%]
126
[29.6%]
16_代筆等なし 1
[5.0%]
2
[2.6%]
7
[11.3%]
1
[2.5%]
3
[2.8%]
3
[2.8%]
1
[3.1%]
1
[3.3%]
15
[3.5%]
17_特になし 3
[15.0%]
16
[20.5%]
1
[20.0%]
23
[37.1%]
14
[35.0%]
16
[15.0%]
28
[26.2%]
15
[46.9%]
5
[16.7%]
108
[25.4%]

【留意点】
ア)最左列はオンライン授業で困ったこと・課題を簡略化して示す。
イ)表内の各セルにおいて、上段は人数を、下段は各障害分類における構成比を示す。最右列は各回答の人数と未回答者を除く全回答者のうちに占める当該回答者の構成比を示す。
ウ)障害が重複する場合があるため、当該障害を理由とした内容とは限らない。特に人数や構成比が小さいものは他の障害との重複により、カウントされやすい。

(5)オンライン授業で新たに必要とした配慮内容

オンライン授業で新たに必要とした配慮内容のうち、構成比が大きいものを表28に示す。質問項目「29:オンライン授業で新たに必要とした配慮内容」の回答内容に基づくコーディング作業の結果により集計された。
表28より、オンライン授業で新たに必要とした配慮内容として最も多く挙げられたものは『37_オンデマンド動画・資料の利用期限の柔軟な設定』(5人/5人:100.0%)であり、次いで、『39_チャット等の使用』(11人/12人:約91.7%)、『40_カメラやマイクのオフ』(13人/17人:約76.5%)、『9_ビデオ教材字幕付け・文字起こし』(15人/25人:約60.0%)などが挙げられた。
このことは、表25〜27の結果を踏まえると、オンライン授業で動画視聴や課題提出が頻繁に行われることに伴って、対面授業では生じなかった動画視聴期限や資料の利用期限などに対して時間延長の配慮が必要になったと考えられる。また、チャットについてはオンライン授業(リアルタイム:同時双方向)において、音声コミュニケーションが苦手な聴覚障害、言語障害、発達障害等のある学生での新たな配慮内容として必要になったと考えられた。カメラやマイクのオフを新たに配慮として行うことにより、発達障害や精神障害のある学生において他者の映像や自身の映像をオフにすることで障害により生じる不安や緊張等を緩和して授業にアクセスしやすくするために必要になったと考えられた。聴覚障害等のある学生においてはオンデマンド動画や音声教材から情報を取得することが難しいため、リアルタイムの要約筆記ではなく、オンデマンド教材に字幕を音声認識により付与することや文字起こしを行うことの必要性が対面授業と比べて増加した可能性が推察された。

表28 オンライン授業で新たに必要とした配慮内容(構成比順)
区分 該当人数(人) 対象人数(人) 構成比(%)
37.オンデマンド動画・資料の利用期限の柔軟な設定 5 5 100.0
39.チャット等の使用 11 12 91.7
40.カメラやマイクのオフ 13 17 76.5
9.ビデオ教材字幕付け・文字起こし 15 25 60.0
5.リーディングサービス 2 4 50.0
41.話者の口型情報の利用 7 14 50.0

【留意点】
ア) 該当人数は「29:オンライン授業で新たに必要とした配慮内容」に挙げた人数を示し、対象人数は「12:申請した/提供された配慮内容」の人数を示す。構成比は該当人数を対象人数で除算して、100を乗ずることで算出した。
イ) 表には構成比が大きいもののうち、上位5件(同順位があり、6件)のみを掲載した。

(6)オンライン授業における配慮の適切性

オンライン授業における配慮が対面授業と比べて適切に提供されたかについて、表29に示す。質問項目「30:オンライン授業における配慮の適切性」について『1:全くそう思わない』から『5:とてもそう思う』までの5件法を点数化した。値が大きいほどオンライン授業における配慮が適切に提供されたことを示し、値が小さいほど適切に提供されていないことを示す。なお、一つの項目でも『#:非該当』や未入力がある場合には分析対象から除外した。
表29より、オンライン授業における配慮が対面授業と比べて適切に提供されたと思うと評価した学生は約47.6%(122人)であった。
配慮の適切性に関する理由を表30に示す。平均値-1SD以下である、『1:全くそう思わない』または『2:そう思わない』と回答した学生を低評価群とし、平均値+1SD以上である、『5:とてもそう思う』と回答した学生を高評価群とした。高評価群および低評価群について、質問項目「31:オンライン授業における配慮の適切性の理由」の回答内容を記載した。
表30より、高評価群においては、表26に挙げられるオンライン授業で役立ったものを理由として挙げていたほか、対面授業と比べてオンライン授業の方が配慮を求める必要性が低下したことが主に挙げられていた。低評価群においては、配慮の調整におけるコミュニケーションが上手くいかないことや、オンライン授業により教員が障害学生の存在を認識できないことなど、意思疎通の課題が主に挙げられていた。

表29 オンライン授業における配慮の適切性(障害分類別)
区分 障害学生数(人) 平均値 標準偏差 肯定的評価の人数[割合]
視覚障害 17 3.65 0.93 8 [47.0%]
うち盲 5 3.60 0.89 2 [40.0%]
うち弱視 12 3.67 0.99 6 [50.0%]
聴覚障害 52 3.52 1.08 28 [53.8%]
うち聾 37 3.43 1.14 17 [45.9%]
うち難聴 15 3.73 0.88 11 [73.3%]
言語障害 1 4.00 1 [100.0%]
肢体不自由 29 3.79 1.08 18 [62.0%]
うち上肢機能障害 3 3.00 1.00 1 [33.3%]
うち下肢機能障害 7 3.57 1.40 4 [57.2%]
うち上下肢機能障害 17 3.88 1.05 11 [64.7%]
うち他の機能障害 8 3.75 1.04 5 [62.5%]
内部障害 21 3.57 1.08 12 [57.1%]
発達障害 60 3.27 0.95 22 [36.7%]
うち自閉スペクトラム症 46 3.28 0.78 17 [36.9%]
うち注意欠如・多動症 27 3.11 1.16 8 [29.6%]
うち限局性学習症 4 3.00 1.63 1 [25.0%]
精神障害 70 3.64 1.14 37 [52.9%]
うち統合失調症等 5 4.60 0.55 5 [100.0%]
うち気分障害 29 3.38 1.02 12 [41.4%]
うち神経症性障害 26 3.65 1.16 13 [50.0%]
うち摂食障害・睡眠障害等 6 3.33 1.03 2 [33.4%]
うち他の精神障害 19 3.84 1.07 12 [63.2%]
その他の障害 18 3.17 0.99 4 [22.3%]
診断無+傾向有 16 3.13 1.03 6 [37.6%]
合計 256 3.50 1.05 122 [47.6%]

【留意点】
ア)平均値のため、人数が少ないものは評価が偏る可能性がある。
イ)重複障害のある学生では、特定の障害分類に対する配慮の評価が他の障害分類に対する配慮の評価に影響している可能性がある。
ウ)「肯定的評価の人数[割合]」は、『5:とてもそう思う』または『4:そう思う』と回答した学生について、人数および括弧書きで割合を示す。

(7)オンライン授業の各形態における受講しやすさ

オンライン授業の各形態における受講しやすさについて、表31に示す。質問項目「32:オンライン授業の受講しやすさ」について『−5』から『+5』までの11件法を点数化した。値が正であり、大きいほど対面授業よりも受講しやすいことを示し、値が負であり、小さいほど、対面授業よりも受講しにくいことを示す。なお、一つの項目でも『非該当』や未入力がある場合には分析対象から除外した。また、表32に各形態における受講しやすさを得点別に構成比で示す。
表31および表32より、障害学生全体において、最も受講しやすい形態は『2_オンデマンド動画授業』(平均約2.47点)であり、次いで、『3_オンデマンド資料配布型授業』(平均約2.22点)、『1_リアルタイム授業:同時配信』(平均約0.75点)であった。障害分類別に見ると、聴覚障害のある学生では『3_オンデマンド資料配布型授業』、他の障害分類では『2_オンデマンド動画授業』が最も受講しやすい形態と評価されていた。対面授業の受講しやすさを0点とした際の比較として、負の値を取っているものは『1_リアルタイム授業:同時配信』における“肢体不自由(下肢機能障害)”(約-0.59点)、“発達障害(ADHD:注意欠如・多動症)”(約-0.17点)、“聴覚障害(聾)”(約-0.04点)であり、そのほかの項目の平均値はすべて正の値であった。
オンライン授業の受講しやすさの理由を表33に示す。平均値-1SD以下である学生を低評価群とし、平均値+1SD以上である学生を高評価群とした。なお、天井効果の見られた『2_オンデマンド動画授業』、『3_オンデマンド資料配布型授業』は『+5』のみ高評価群とした。高評価群および低評価群について、質問項目「33_オンライン授業の受講しやすさの理由」の回答内容をオンライン授業の各形態別に記載した。また、全て負の値を取るもの、つまり、すべて対面授業よりも低評価であった理由についても記載した。
表33より、『1_リアルタイム授業:同時配信』を高く評価した学生では、先生に気軽に質問をしやすいこと、リアルタイムでは強制力が働いて放置しにくいことなどが挙げられた。『2_オンデマンド動画授業』を高く評価した学生では、自分のペースで受講できることが主に挙げられた。『3_オンデマンド資料配布型授業』を高く評価した学生では、聴覚障害のある学生で文字情報をベースに情報を取得するために役立つことなどが挙げられていた。一方で、『1_リアルタイム授業:同時配信』を低く評価した学生では、筆記が追いつかないこと、接続不良等の配信トラブル、対面授業よりも人に見られている感覚の強さなどを低評価の理由として挙げていた。『2_オンデマンド動画授業』では字幕がついていない、あるいは十分な質が保証されていなかったこと、他の学生と相談しづらかったり、視聴を忘れてしまうなどが低評価の理由として挙げられていた。『3_オンデマンド資料配布型授業』では授業そのものが面白くない、意義を感じない、内容が理解できないなどが低評価の理由として挙げられていた。また、すべてのオンライン授業の形態で負の値を示した学生では、オンライン授業であると他の学生や教員とのコミュニケーションができず、集中力が続きにくいことなどが主に挙げられていた。

表31 オンライン授業の各形態における受講しやすさ(障害分類別)
区分 1.リアルタイム 2.オンデマンド動画 3.オンデマンド資料配布
視覚障害 0.59
[2.85]
2.88
[1.82]
2.44
[3.14]
うち盲 0.17
[2.93]
2.25
[2.22]
1.75
[3.95]
うち弱視 0.82
[2.93]
3.08
[1.73]
2.67
[3.00]
聴覚障害 0.34
[3.09]
1.82
[3.10]
2.44
[2.93]
うち聾 -0.04
[3.21]
2.02
[3.17]
2.66
[2.93]
うち難聴 1.13
[2.74]
1.38
[2.99]
1.95
[2.93]
言語障害 1.75
[2.06]
3.75
[0.96]
3.25
[1.26]
肢体不自由 0.67
[2.77]
2.84
[2.08]
2.23
[2.84]
うち上肢機能障害 0.20
[4.09]
1.40
[3.91]
1.50
[4.73]
うち下肢機能障害 -0.59
[2.35]
2.06
[2.33]
1.00
[2.92]
うち上下肢機能障害 1.44
[2.61]
3.21
[1.92]
2.63
[2.74]
うち他の機能障害 0.75
[2.56]
3.33
[2.19]
3.10
[2.56]
内部障害 1.47
[2.71]
2.87
[2.38]
2.39
[2.52]
発達障害 0.27
[2.95]
2.10
[3.08]
1.80
[3.13]
うち自閉スペクトラム症 0.48
[2.89]
2.18
[2.89]
1.98
[2.98]
うち注意欠如・多動症 -0.17
[3.32]
1.93
[3.58]
1.68
[3.45]
うち限局性学習症 0.57
[4.39]
2.50
[3.89]
2.33
[3.50]
精神障害 0.91
[2.76]
2.53
[2.89]
2.09
[3.06]
うち統合失調症等 2.83
[2.04]
3.86
[0.90]
3.83
[0.98]
うち気分障害 0.08
[2.97]
1.89
[3.45]
1.27
[3.69]
うち神経症性障害 0.83
[2.48]
3.05
[2.49]
2.68
[2.84]
うち摂食障害・睡眠障害等 1.90
[2.51]
2.33
[2.60]
1.40
[2.80]
うち他の精神障害 0.54
[2.47]
2.83
[2.35]
2.74
[1.96]
その他の障害 1.70
[2.68]
2.89
[2.74]
2.79
[2.97]
診断無+傾向有 1.29
[2.43]
2.86
[2.55]
2.57
[2.63]
合計 0.75
[2.80]
2.47
[2.76]
2.22
[2.91]

【留意点】
ア)表内の各セルにおいて、上段は平均値を、下段は標準偏差(SD)を示す。
イ)平均値のため、人数が少ないものは評価が偏る可能性がある。
ウ)重複障害のある学生では、特定の障害分類に対する内容が他の障害分類に対する内容に影響している可能性がある。

表32 オンライン授業の各形態における受講しやすさ(得点別)
区分 -5 -4 -3 -2 -1 0 +1 +2 +3 +4 +5
1.リアルタイム授業 5.5 1.8 7.6 8.9 7.3 14.8 10.4 13.5 11.5 8.3 10.4
2.オンデマンド動画授業 3.5 1.9 3.5 2.7 1.9 8.3 5.9 9.4 17.5 14.2 31.2
3.オンデマンド資料配布型授業 4.8 2.2 2.5 3.1 4.2 9.2 8.1 6.2 17.1 12.0 30.5

【留意点】
ア)各形態について「#:非該当」を除く全回答者のうちに占める当該回答者の構成比を示す。

(8)オンライン授業における学習状況の変化

オンライン授業における学習状況の変化について、表32に示す。質問項目「34」〜「37」について『1:ほとんどない』から『6:多くある』までの6件法を点数化して算出した。値が大きいほど、学習状況が改善した講義が多くあることを示し、値が小さいほどそのような講義が少ないことを示す。なお、一つの項目でも『#:非該当』や未入力がある場合には分析対象から除外した。
表34より、障害学生と大学生一般においてオンライン授業における総学習時間や学習効果、教員とのコミュニケーション、集中の持続に関しては顕著な差は見られなかった。

表34 オンライン授業における学習状況の変化(障害分類別)
区分 1.総学習時間 2.学習効果 3.コミュニケーション 4.集中
視覚障害 4.83
[1.30]
5.00
[0.91]
3.17
[1.69]
4.06
[1.39]
うち盲 5.33
[0.82]
4.50
[1.05]
3.67
[1.86]
4.33
[1.03]
うち弱視 4.58
[1.44]
5.25
[0.75]
2.92
[1.62]
3.92
[1.56]
聴覚障害 5.00
[1.11]
3.99
[1.36]
3.03
[1.50]
3.62
[1.39]
うち聾 5.00
[1.14]
3.90
[1.43]
3.06
[1.42]
3.50
[1.39]
うち難聴 5.00
[1.04]
4.17
[1.19]
2.96
[1.69]
3.87
[1.39]
言語障害 5.25
[0.50]
2.75
[1.71]
2.75
[1.71]
3.25
[1.89]
肢体不自由 4.82
[1.35]
4.07
[1.42]
2.48
[1.56]
3.74
[1.52]
うち上肢機能障害 4.83
[0.75]
4.00
[0.89]
3.50
[2.17]
4.33
[1.21]
うち下肢機能障害 4.41
[1.62]
3.65
[1.54]
2.65
[1.62]
3.41
[1.66]
うち上下肢機能障害 5.00
[1.29]
4.33
[1.35]
2.33
[1.45]
3.92
[1.46]
うち他の機能障害 5.00
[1.23]
3.69
[1.75]
2.31
[1.55]
3.23
[1.09]
内部障害 4.95
[0.96]
3.88
[1.54]
2.33
[1.29]
3.83
[1.52]
発達障害 4.78
[1.37]
4.08
[1.65]
2.69
[1.55]
3.73
[1.71]
うち自閉スペクトラム症 4.80
[1.34]
4.23
[1.52]
2.84
[1.57]
3.82
[1.58]
うち注意欠如・多動症 4.84
[1.52]
4.04
[1.80]
2.58
[1.55]
3.73
[1.85]
うち限局性学習症 5.44
[0.73]
3.56
[2.24]
2.22
[1.72]
3.78
[2.05]
精神障害 4.73
[1.38]
3.96
[1.61]
3.10
[1.60]
4.00
[1.65]
うち統合失調症等 4.71
[0.95]
4.29
[1.60]
3.14
[1.07]
4.43
[0.79]
うち気分障害 4.85
[1.41]
3.79
[1.75]
2.85
[1.76]
3.67
[1.83]
うち神経症性障害 4.57
[1.55]
3.90
[1.82]
3.00
[1.64]
4.05
[1.75]
うち摂食障害・睡眠障害等 5.40
[0.97]
4.00
[1.56]
2.80
[1.55]
3.80
[1.69]
うち他の精神障害 4.68
[1.19]
3.64
[1.57]
3.71
[1.54]
3.89
[1.50]
その他の障害 5.00
[1.08]
4.69
[1.33]
3.00
[1.59]
3.91
[1.33]
診断無+傾向有 5.00
[1.04]
4.48
[1.21]
3.24
[1.48]
3.69
[1.51]
障害学生合計 4.84
[1.27]
4.11
[1.50]
2.89
[1.54]
3.79
[1.55]
大学生一般合計 5.03
[1.18]
3.80
[1.50]
2.95
[1.49]
3.71
[1.49]

【留意点】
ア)「大学生一般合計」は、東洋大学現代社会総合研究所ICT教育研究プロジェクト「コロナ禍対応のオンライン講義に関する学生意識調査」の対象となった大学生のデータをもとに算出している。
イ)表内の各セルにおいて、上段は平均値を、下段は標準偏差(SD)を示す。
ウ)平均値のため、人数が少ないものは評価が偏る可能性がある。
エ)重複障害のある学生では、特定の障害分類に対する内容が他の障害分類に対する内容に影響している可能性がある。

(9)今後のオンライン授業の希望

今後もオンライン授業を続けてほしいかについて、表35に示す。質問項目「38:今後のオンライン授業の希望」について『1:全くそう思わない』から『5:とてもそう思う』までの5件法を点数化した。値が大きいほど今後もオンライン授業の継続を希望することを示し、値が小さいほど、オンライン授業の継続を希望しないことを示す。なお、一つの項目でも『#:非該当』や未入力がある場合には分析対象から除外した。
表35より、障害学生全体において、今後もオンライン授業を続けてほしいと思うと回答した学生は約55.6%(225人)であった。障害分類別に見ると、『視覚障害(弱視)』(約75.0%)、『発達障害(SLD:限局性学習症)』(約77.8%)、『精神障害(統合失調症等)』(約85.7%)では今後もオンライン授業を続けてほしいと思うと回答した学生の割合がやや高かった。一方で、『肢体不自由』(約39.3%)、『聴覚障害(聾)』(約38.0%)では今後もオンライン授業を続けてほしいと思うと回答した学生の割合がやや低かった。
今後のオンライン授業の希望の理由を表36に示す。平均値-1SD以下である学生を低評価群とし、平均値+1SD以上である学生を高評価群とした。高評価群および低評価群について、質問項目「39:今後のオンライン授業の希望の理由」の回答内容を記載した。表36より、今後もオンライン授業の継続を希望する理由として、先述のオンデマンド動画授業の利点に加えて、オンライン授業になることにより対面で必要になった合理的配慮が必要なくなって他の学生と同じ条件で受けられること、授業参加がしやすくなることで勉強の楽しさも分かるようになり学習意欲も増してきたこと、資料提供などこれまで提供された個別対応が一斉に対応されることでとても学習しやすい環境になったこと、などが挙げられていた。一方で、オンライン授業の継続を希望しない理由として、先述の対面授業の利点に加えて、教員が障害学生の存在を認識できず合理的配慮が提供されなくなることなどが挙げられていた。

表35 今後のオンライン授業の希望(障害分類別)
区分 障害学生数(人) 平均値 標準偏差 肯定的評価の人数[割合]
視覚障害 19 3.84 1.17 12 [63.1%]
うち盲 7 3.43 1.40 3 [42.9%]
うち弱視 12 4.08 1.00 9 [75.0%]
聴覚障害 73 3.23 1.39 33 [45.2%]
うち聾 50 3.08 1.37 19 [38.0%]
うち難聴 23 3.57 1.41 14 [60.9%]
言語障害 4 3.75 1.26 3 [75.0%]
肢体不自由 61 3.13 1.32 24 [39.3%]
うち上肢機能障害 6 3.33 1.03 2 [33.4%]
うち下肢機能障害 17 2.76 1.25 5 [29.4%]
うち上下肢機能障害 36 3.36 1.29 17 [47.2%]
うち他の機能障害 13 2.54 1.51 4  [30.8%]
内部障害 40 3.27 1.40 20 [50.0%]
発達障害 99 3.58 1.43 58 [58.6%]
うち自閉スペクトラム症 73 3.60 1.38 44 [60.3%]
うち注意欠如・多動症 46 3.50 1.47 24 [52.1%]
うち限局性学習症 9 4.00 1.50 7  [77.8%]
精神障害 102 3.75 1.22 63 [61.8%]
うち統合失調症等 7 4.00 0.58 6 [85.7%]
うち気分障害 41 3.32 1.42 21 [51.2%]
うち神経症性障害 40 4.03 1.17 28 [70.0%]
うち摂食障害・睡眠障害等 10 3.70 1.25 6 [60.0%]
うち他の精神障害 28 3.64 0.99 15 [53.5%]
その他の障害 32 3.72 1.35 21 [65.6%]
診断無+傾向有 29 3.79 1.21 21 [72.4%]
合計 405 3.51 1.33 225 [55.6%]

【留意点】
ア)平均値のため、人数が少ないものは評価が偏る可能性がある。
イ)重複障害のある学生では、特定の障害分類に対する内容が他の障害分類に対する内容に影響している可能性がある。
ウ)「肯定的評価の人数[割合]」は、『5:とてもそう思う』または『4:そう思う』と回答した学生について、人数および括弧書きで割合を示す。

2.コロナ禍における学生生活への影響

(1)友人関係

大学で新しくできた友達の人数について、表37に示す。質問項目「40:大学で新しくできた友達の人数」の回答内容に基づき、集計された。
表37より、障害学生において大学で新しくできた友達の人数として最も多いものは『5人未満』(141人:約33.7%)であり、次いで、『0人』(138人:約33.0%)、『10人未満』(61人:約14.6%)であった。この割合は大学生一般のデータと比べても大きな違いは見られなかった。このことから、コロナ禍の友人関係においては、障害学生と大学生一般で顕著な差は見られない可能性が考えられた。

表37 大学で新しくできた友達の人数
区分 障害学生人数(人) 障害学生構成比(%) 大学生一般人数(人) 大学生一般構成比(%)
0人 138 33.0 7669 37.1
5人未満 141 33.7 6990 33.8
10人未満 61 14.6 2720 13.1
20人未満 42 10.0 1674 8.1
50人未満 26 6.2 935 4.5
50人以上 10 2.4 706 3.4
合計 418 100.0 20694 100.0

【留意点】
ア)「大学生一般」は、2020年4月に実施された全国大学生活協同組合連合会「緊急!大学生・院生向けアンケート(大学生集計結果)」の対象となった大学生のデータをもとに算出している。

(2)アルバイトの状況

アルバイトの状況について、表38に示す。質問項目「41:アルバイトの状況」の回答内容に基づき、集計された。
表38より、障害学生におけるアルバイトの状況に関して最も多いものは『していない』(166人:約39.7%)であり、次いで、『しており、シフトもしっかりはいっている』(93人:約22.2%)、『しているが、あまりシフトに入れていない』(82人:約19.6%)、『していたが、自分の事情でやめることになった』(49人:約11.7%)であった。大学生一般のデータと比べると、『しており、シフトもしっかりはいっている』または『していたが、自分の事情でやめることになった』の割合がやや高く、『しているが、あまりシフトに入れていない』の割合がやや低い傾向にあった。この点については、特に障害学生が自分の事情でアルバイトをやめることになった場合の事象について、より詳細な分析が必要であると考えられる。

表38 アルバイトの状況
区分 障害学生人数(人) 障害学生構成比(%) 大学生一般人数(人) 大学生一般構成比(%)
しており、シフトもしっかり入っている 93 22.2 5993 17.0
しているが、あまりシフトに入れていない 82 19.6 12449 35.3
していたが、自分の事情でやめることになった 49 11.7 1534 4.4
していたが、勤め先の事情でやめることになった 6 1.4 1096 3.1
していない 166 39.7 13325 37.8
その他 22 5.3 838 2.4
合計 418 100.0 35235 100.0

【留意点】
ア)「大学生一般」は、2020年4月に実施された全国大学生活協同組合連合会「緊急!大学生・院生向けアンケート(大学生集計結果)」の対象となった大学生のデータをもとに算出している。

(3)経済的な不安

この先の経済的な不安について、表39に示す。質問項目「42:経済的な不安」の回答内容に基づき、集計された。
表39より、障害学生における経済的な不安に関して最も多いものは『不安である』(128人:約30.6%)であり、次いで、『非常に不安である』(108人:約25.8%)、『どちらともいえない』(80人:約19.1%)であった。この割合は大学生一般のデータと比べると、不安であるとする割合が障害学生ではやや低く、不安ではないとする割合が障害学生ではやや高かった。このことから、コロナ禍の経済的な不安においては障害学生と大学生一般で顕著な差は見られない、あるいはやや障害学生の方が経済的な不安を感じにくい可能性が考えられる。しかしながら、その理由の詳細については更なる調査が必要である。

表39 経済的な不安
区分 障害学生人数(人) 障害学生構成比(%) 大学生一般人数(人) 大学生一般構成比(%)
非常に不安である 108 25.8 10079 29.2
不安である 128 30.6 13267 38.5
どちらともいえない 80 19.1 6610 19.2
不安ではない 64 15.3 3513 10.2
全く不安ではない 38 9.1 1016 2.9
合計 418 100.0 34485 100.0

【留意点】
ア)「大学生一般」は、2020年4月に実施された全国大学生活協同組合連合会「緊急!大学生・院生向けアンケート(大学生集計結果)」の対象となった大学生のデータをもとに算出している。

(4)将来や進路に対する不安

将来や進路に対する不安について、表40に示す。質問項目「43:将来や進路に対する不安」の回答内容に基づき、集計された。
表40より、障害学生における将来や進路に対する不安に関して最も多いものは『とても感じている』(217人:約52.0%)であり、次いで、『感じている』(137人:約32.9%)、『あまり感じていない』(44人:約10.6%)であった。この割合は大学生一般のデータと比べると、『とても感じている』が比較的多い結果であった。このことについて、経済的な不安も含めて考えると、障害学生においては将来の就職や進学などについてコロナ禍における障害者雇用を含めた雇用情勢の悪化など、障害学生特有の将来や進路の選択にあたり、大学生一般よりも不安をより強く感じる傾向がある可能性が考えられた。しかしながら、その理由については更なる調査が必要である。

表40 将来や進路に対する不安
区分 障害学生人数(人) 障害学生構成比(%) 大学生一般人数(人) 大学生一般構成比(%)
とても感じている 217 52.0 14626 41.9
感じている 137 32.9 14655 41.9
あまり感じていない 44 10.6 4968 14.2
全く感じていない 14 3.4 512 1.5
その他 5 1.2 174 0.5
合計 417 100.0 34935 100.0

【留意点】
ア)「大学生一般」は、2020年4月に実施された全国大学生活協同組合連合会「緊急!大学生・院生向けアンケート(大学生集計結果)」の対象となった大学生のデータをもとに算出している。

注意:下記の表については情報量が多いため、HTML上では割愛しております。PDF版をご確認ください。

  • 表26 オンライン授業で役立ったことの理由
  • 表30 オンライン授業における配慮の適切性の理由
  • 表33 オンライン授業の各形態における受講しやすさの理由
  • 表36 今後のオンライン授業の希望の理由